中国の政治

2023年5月12日 (金)

中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは

Images-4_20230507103901  人口減少と高齢化の進展、不動産バブルの崩壊、若者の失業率増大、財政赤字の急増、そしてアメリカなどによる半導体など先端技術の封じ込めと、3期目に入った習近平政権の目の前に、暗雲が立ちこめ始めています。

 こうした中、中国当局は躍起となってそうした懸念をもみ消そうとしています。その実態を経済産業研究所のコンサルティングフェローの藤和彦氏が、デイリー新潮に投稿したコラムに見てみましょう。タイトルは『中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは』(5/01公開)で、以下に引用して掲載します。

足元の最大の不安材料はデフレ懸念

 国連経済社会局は4月24日、「インドの人口が4月末までに中国を追い抜き、世界最多となる」との予測を発表した。今後の見通しについても「インドで数十年にわたり人口が増加し続けるのに対し、中国は今世紀末までに10億人を割り込む」としている。

 国連の予測は19日に国連人口基金が公表したデータに基づく客観的なものだ。だが、中国政府は「西側メディアが中国を中傷するため、人口減少による中国衰退論を意図的に喧伝している」と猛反発している。

 中国の今年第1四半期の経済成長率は前年比4.5%増となり、昨年第4四半期の2.9%増から加速した。これを受けて、米国の大手金融機関は中国の経済成長率を相次いで上方修正しており、国際通貨基金(IMF)も「中国はインドともに今年の世界経済を牽引する」と予測している。

「ゼロ・コロナ政策を解除した中国の景気は回復する」との見方が出ているのにもかかわらず、なぜ中国政府は「衰退論」に過剰反応しているのだろうか。

 中国経済にとって足元の最大の不安材料はデフレ懸念だ。成長率が上振れしているのにもかかわらず、物価の下落傾向が強まっている。

 不動産バブルの崩壊により、で生産者物価指数(PPI)は昨年後半以降、マイナスの状態が続いている。消費者物価指数(CPI)も3月、前年比0.7%増にまで低下している。

 中国政府は「デフレは起きていない」と主張しているが、専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析している(4月19日付ロイター)。

若者のキャリア・パスにも「縮み」の現象が

 デフレとは「物価が持続的に下落している現象」であり、日本語では「経済収縮」と訳される。平たく言えば「経済が持続的に縮んでいく」ことだが、中国経済は至るところで「縮み」傾向が目立つようになっている。

 この傾向が最も顕著なのは個人消費だ。日本を始め先進国の国内総生産に占める個人消費の割合は5割を超えるが、中国の比率は4割に満たない。このことは中国経済が抱える構造的な弱点とされてきたが、足元の状況はむしろ悪化している感がある。

Images-6_20230507104301  不動産バブルの崩壊がもたらす資産デフレが悪影響を与えており、中国の家計は将来のリスクに備えて貯蓄を大幅に増やしている。中国の家計貯蓄は昨年、17兆8000億元増と過去最大の伸びを示した。今年第1四半期にさらに9兆9000億元増加し、増加幅は2021年通年の伸びに匹敵する。

 この大きく膨らんだ貯蓄を消費などに振り向けるため、中国政府は銀行に対して預金金利をさらに引き下げるよう指示しているが、成果が上がるとは思えない。3月の失業率は16歳から24歳までが19.6%と記録的な水準に達しており、雇用不安が続く状況で中国人の貯蓄志向が変わるとは思えないからだ。

 中国の若者のキャリア・パスに「縮み」の現象が生じていることも気になるところだ。

 高学歴の若者たちが高給取りの仕事を捨て、低賃金の肉体労働の仕事に転職して慎ましく生きていくという選択を取り始めている(「クーリエ・ジャポン」4月20日配信記事)。若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという。

「縮み」傾向の下、中国の海外旅行者の数もピーク時の水準を大きく下回っており(「ロイター」4月19日配信記事)、中国人観光客の増加による日本のインバウンド需要の拡大は期待外れに終わってしまうのかもしれない。

足かせは中国を巡る地政学リスク

 中国経済を牽引していた輸出も「縮み」始めている。

 予想に反し、中国の3月の輸出は増加に転じた。6カ月ぶりのことだが、「コロナ以前の水準にまで回復することは難しい」との予測が一般的だ。

 その要因の1つとして、中国の人件費上昇がある。これを受けて、製造業の生産拠点が東南アジアに多く移転した。

 今年4月、中国最大の貿易見本市である広州交易会が4年ぶりに開催されたが、出展した中国の輸出企業は環境の激変ぶりを痛感しており、今後、輸出部門で大幅なリストラが実施されるのは必至の情勢だ。

 中国経済の成長に貢献してきた海外からの投資マネーも縮んでいる。

 習近平国家主席を筆頭に中国の当局者らが異口同音に中国経済の復活を宣言し、規制強化で招いたダメージの修復に取り組んでいるが、中国ハイテク企業からの投資の引き揚げが止まらない(「Bloomberg」4月14日配信記事)。

 足かせとなっているのは中国を巡る地政学リスクだ。外国勢の資金引き揚げが進み、中国株の下落が続いている。

「Bloomberg」の記事はモルガン・チェースの調査を引用し、投資家が「最も撤退する可能性が高い新興国」として挙げたのは中国だったとしている。中国経済は回復しつつあっても、「投資家の頭に浮かぶのは米中関係や台湾問題」だからだ。

 中国の科学技術分野の論文発表数は米国に次いで世界第2位となり、「科学技術大国」のイメージが強まっているが、実態は違うようだ。

 研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており(「クーリエ・ジャポン」4月23日配信記事)、「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう。

 このように、中国経済の縮み(衰退)は深刻だ。中国政府が声高に衰退論を否定するのは、このことを誰よりもよく知っているからではないだろうか。

 独裁国家に共通するのは、自国の弱点を隠し、時として真逆の主張をしたり殊更必要以上に否定をしたりすることです。中国の「衰退の否定」もその流れにあるのでしょう。

 日本は既に30年前に、デフレの渦中に入ってしまいましたが、そのときの状況、つまり労働力人口の減少や不動産バブルの崩壊と言ったところが、今の中国でも全く同じ状態になっていることです。これから中国でもデフレが続くことが十分予想されます。

 何度も言うようですが、チャイナリスク(政治リスク)に加え、デフレに陥った(と思われる)この国から、事業の撤退や投資の回収を急いだ方がいいでしょう。そうした中で、本当に衰退が進めば、覇権の弱体化にもつながり、世界にとってはこの上ない朗報となると思います。


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2023年4月30日 (日)

福島香織氏:習近平政権になって増加した活動家逮捕と拷問、中国の人権弾圧はさらに続く

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 中国でスパイの定義を拡大した改正法が成立しました。ますます監視の目が厳格となり在住外国人のさまざまな行動にも、当局の一層の網の目が掛けられることになります。

 一方で人権活動家にも更なる弾圧が強化されていて、逮捕、拘束された後の拷問など、弾圧は酷くなっているようです。ジャーナリストの福島香織氏が、JBpressに寄稿した記事がその詳細を語っています。タイトルは『習近平政権になって増加した活動家逮捕と拷問、中国の人権弾圧はさらに続く 次々に逮捕され秘密裁判にかけられる人権活動家たち』(4/20公開)で、以下に引用します。

 この春、習近平が「平和の使者」としてロシア・ウクライナ戦争の調停者の役割をアピールし始めたこともあって、EU諸国の首脳、ハイレベル官僚が相次いで北京詣でを行っている。スペインのサンチェス首相、フランスのマクロン大統領、EUのフォン・デア・ライエン委員長、ドイツのベアポック外相・・・。

 だが習近平の「新時代の大国平和外交」の背後に、圧迫の度合いが急激に増している庶民の人権問題があることを忘れてはならない。

服役中に壮絶な拷問を受けた余文生

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 4月13日、著名人権弁護士の余文生とその妻、許艶が、北京市の派出所から呼び出されたまま連絡が途絶えた。余文生夫妻はその日、EU在中国代表部に訪問する予定だった。余文生夫妻は家族に、中国当局に「挑発罪」容疑で逮捕されたと口頭で伝えている。

 また人権弁護士の王全璋、王宇、包竜軍らが4月14日、警察から外出を禁じられた。おそらくは同13~15日に行われたドイツ外相の訪中と関係があるとみられている。

 EU代表部は4月13日に余文生夫妻がEU代表部に向かう途中で警察に拘留されたことをツイッターで発表し、即座に2人の釈放を要求する、とした。

 余文生夫妻の拘留が発覚して後、知り合いの人権派弁護士、宋玉生と彭剣が余文生の息子の様子を見に自宅に行くと、家の前で2人の看守が監視していた。4月14日夜に7人の警官が自宅を訪れ、余文生が逮捕されたとする通知書を息子に読み上げ、家宅捜査を行い、夫妻の私物を押収したという。

 余文生は、2015年7月9日に起きた人権派弁護士大量弾圧事件の通称「709事件」で逮捕、起訴された王全璋らを擁護し、709事件を「小文革」と非難したことでも知られる。その後、余文生も弾圧対象となり、弁護士資格を剥奪され、国家政権転覆煽動罪で逮捕、起訴、懲役4年の判決を受けて服役していた。

 余文生は最初の拘留中、面相が変わるほどの壮絶な拷問を受けていた。2018年5月、メルケル首相が訪中したとき、余文生の妻の許艶と会見し、中国の人権問題の深刻さについて話し合ったことがあった。

 余文生は2022年3月に出所、獄中の激しい拷問や、妻や息子の安全を盾に自白を強要されたことを出所後、外国メディアのインタビューで語っていた。

 ドイツ外相訪中などに合わせて、習近平政権が再び余文生を拘束し、王全璋に圧力をかけたということは、709事件はまだ終わっていない、ということだろう。そして、ドイツを含むEU諸国に、中国との人権対話が再開されても中国側には譲歩の意志がないことを示したともいえる。

「国家政権転覆煽動」容疑で逮捕された許志永と丁家喜

 余文生夫妻拘束の数日前の4月10日、山東省の人民法院は、新公民権運動活動家で法律家の許志永(50歳)と、新公民権運動に参加していた弁護士の丁家喜(55歳)に対し国家政権転覆煽動の罪でそれぞれ禁固14年、12年の一審判決を言い渡した。彼らは国際的に著名な人権活動家だったが、逮捕後、秘密裁判にかけられていた。

 国際的な人権NGOヒューマンライツウォッチは、2人の裁判の審理プロセスに大いに問題があるとして、中国当局を非難した。ヒューマンライツウォッチの中国部シニア研究員である王亜秋は、「各国政府は、中国当局にすぐに無条件で2人の弁護士を釈放するよう呼びかけるべきだ」と訴えている。

 彼らの逮捕の直接理由は、2019年12月26日、福建省厦門市で行われた人権派弁護士たちによるクローズドの勉強会に参加したことだった。この会合では人権派弁護士、公民権運動家ら約20人が参加し、食事をしながら公民権運動の未来について討論していた。その後、この会合の参加者が次々と捕まった。これは2015年709事件に続く中国習近平体制下の大規模人権弾圧事件として通称「厦門聚餐事件(厦門食事会事件)」あるいは「1226事件」と呼ばれている。

 中国当局(山東省公安局)は2019年12月、北京の友人宅にいた丁家喜(55歳)を逮捕、2020年2月には広州市内に匿(かくま)われていた許志永(50歳)も逮捕した。ほかにも北京の女性労働者権利擁護活動家で許志永の恋人である李翅楚も国家政権転覆煽動の容疑で逮捕され、今なお秘密裡に審理中だ。

「都市浮浪乞食収容送還法」を廃止に追いんだ許志永

 許志永は、私が北京で特派員記者として働いていた頃に何度か取材したことがある。元北京郵電大学講師で、公民権擁護機関「公盟」の共同創設人であり、「新公民運動」の発起人だった。

 丁家喜は北京航空大学卒業のエンジニアだったが後に法律を勉強し商務弁護士に転身した秀才で、やはり公盟に参加し、新公民運動を推進してきた。

 この運動は労働者や農民ら公民の権利を提唱し、政府の透明性と平等に教育を受ける権利などを訴えていた。

 許志永を最初に取材したのは2003年秋、北京市海淀区の人民代表選挙に立候補したときで、彼は庶民のヒーローだった。

 当時2003年3月、広州市で出稼ぎの青年がホームレスと間違われて当局の派出所に強制収容され、収容先で暴行死させられた。この「孫志剛事件」をきっかけに、農村からの出稼ぎ労働者に対する不当な差別に対する庶民の怒りが爆発。許志永は滕彪(人権弁護士、米国に亡命)らとともに全人代常務委員あてに意見書を出し、世論を喚起して、出稼ぎ者をホームレス扱いして強制収容・送還する「都市浮浪乞食収容送還法」を廃止に追い込んだ。

 こののち、出稼ぎ労働者や女性、弱者を公民権に基づいて擁護する組織「陽光憲道社会科学研究センター」(2005年に公盟と改名)を滕彪らと立ち上げ、北京市海淀区の人民代表(区議)に立候補し、当選していた。

 当時の彼は朴訥な好青年で、やわらかい笑顔とわかりやすい表現で、孫志剛事件や自らの立候補について語ってくれた。彼は中国を愛しており、公民の権利が法に基づいて守られる法治国家に中国を変えられると信じていた。

良心的知識人の活動を黙認していた胡錦涛政権

 振り返れば胡錦涛政権がスタートした2002年から2012年までの10年は、中国の公民権運動の萌芽期であり、許志永のような良心的知識人が、中国をより良くしていこうという志を持っていた。また、それが大多数の庶民の心に響いた時代でもあった。

 折しも北京夏季五輪を前に、中国当局も人権問題に対して国際社会からの視線を気にし始めたころであり、彼ら良心的知識人の活動は、矛先が党中央に向かわない限りは黙認される部分があった。

「公盟」は2010年に「公民」と名称を変え、新公民運動を提唱。2012年には習近平への公開書簡を発表し、中国の体制の矛盾について一国民としての真摯な考えを訴えた。だが、おそらくこれが原因で、新公民権運動は習近平から睨まれることになる。この運動に関わったことで丁家喜は2013年から2016年の間、許志永は2014年から2018年まで、公共秩序擾乱罪で4年の禁固刑判決を受け投獄された。

 許志永らは、出所後も新公民権運動を継続しようとし、厦門食事会参加もその一環だった。許志永は厦門食事会参加の後、逃亡している中で習近平への退任勧告をネットで発表。彼の罪が丁家喜よりも重くなったのは、こうした行為が習近平からさらに敵視されたことも関係があるかもしれない。

文革以来の最も過酷な人権弾圧時代

 許志永は少なくとも胡錦涛政権時代には、党中央指導者を個別に批判したことはなかった。習近平に対して厳しい批判を浴びせたのは、やはり習近平体制が特にひどいと感じたからではないだろうか。

 実際、習近平政権のこれまでの10年は、文革以来の中国の最も過酷な人権弾圧時代であるともいえる。

 弾圧対象は、人権派弁護士や新公民運動家にとどまらない。宗教関係者、メディア関係者、民営企業家、共青団派の官僚、マルクス主義の学生たち、さらには長年中国に貢献していきた外国企業の駐在員とあまりに広い。

 そして、こうした苛烈な人権弾圧は、習近平政権3期目も継続することが、今年(2023年)春の一連の人権派弁護士、公民権運動家に対する仕打ちや、日本企業や米国企業の社員のスパイ容疑での逮捕などの事件からわかるだろう。

 許志永ともに新公民運動を立ち上げた滕彪が、ドイツメディア「ドイチェベレ」のインタビューで習近平政権の人権問題への姿勢の特徴を指摘している。

「江沢民、胡錦涛政権時代なら、厦門食事会のような活動は弾圧対象にならなかっただろう。嫌がらせを受けるようなことはあっても、こうした異見人士(意見の異なる知識人)が一斉に逮捕されるようなことはなかった。ましてや国家政権転覆罪なんて容疑で逮捕される人も比較的少なかった」

「習近平時代になってから、国家政権転覆罪を使ったこのような重刑が頻繁に言い渡されている。これは、習近平政権が内心では民間の人権運動をいかに恐れているかを意味していると思う。中国共産党の人権活動家や民間の権利運動に対する敵視具合は頂点に達し、民間パワーの自由主義への影響力を一切排除し尽くそうと思っているのだ」

習近平政権下で明らかに増えている拷問事例

 余文生らの逮捕原因となった2015年の709事件、そして許志永らの逮捕原因となった厦門食事会事件も、いずれも胡錦涛政権下であれば、犯罪を構成する要素すらなかった。取り調べにおける拷問事例も習近平政権下で明らかに増えている。

 EUと中国の人権対話は2019年4月以来途絶え、今年2月に4年ぶりに再会された。だが、今の中国の振る舞いをみると、人権問題について本気で改善する気はなさそうだ。

 中国は今、EUが望むロシア・ウクライナ戦争の停戦を仲介できるキーマンのように振舞っている。その駆け引きの中で人権や台湾問題をカードに利用するつもりではあろうが、本当の狙いは平和ではなかろう。自国民の基本的人権をここまで蹂躙できる国家が本気で平和を望んでいるとは信じられない。平和を餌に掲げながらEUを分断し、米国への疑念を増幅させ、世界を揺さぶろうとしているのではないか。

 中国の言う「民主」や「人権」が私たちの考える民主や人権と違うように、「平和」もまた別物であること忘れてはならない。

 1972年米国や日本が中国との国交を回復し、経済援助と資金援助を開始してから、中国の民主化をひたすら期待していましたが、天安門事件でその期待は大いに削がれました。

 その後急速な経済拡大とそこで可能となった軍事力の拡大により、今や東洋のモンスターとなった中国は、習近平の登場によりその覇権の意思を明確にし、南シナ海へ侵略を開始し、ウィグルを弾圧、香港の一国二制度を破壊し、今また台湾の武力統一を公言しています。

 そして自身の思想の徹底のため、および政権基盤の維持のため、このように反体制派や人権活動家を徹底的に弾圧し、外国人にもその手を広げようとしています。

 少し前、アステラス製薬の社員が拘束された事件もあり、そして政治的な色彩はありませんが、あの自動車ショーでのドイツメーカーBMWに対し、異常な中国民の反応もあります。政権から、そして国民からのチャイナリスクは満載です。

 いまやこの国で事業を続けることは、デメリットの方が大きいでしょう。中国で事業を実施している企業は、可能な限り早い段階で、中国離れを決断することが賢明だと思われます。


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2023年4月24日 (月)

国際ジャーナリストが語る『日本にも拠点、国会議員とも“接点”もつ中国の「秘密警察」の知られざる実態』

5_20230423112501  中国の「秘密警察」。このブログでも何回か取り上げていますが、日本にも存在する「秘密警察」の最新状況を見てみましょう。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が、JBpressに寄稿した記事がそれです。タイトルは『日本にも拠点、国会議員とも“接点”もつ中国の「秘密警察」の知られざる実態 他国の主権などお構いなし、世界中に張り巡らされた国民監視のネットワーク』(4/21公開)で、以下に引用します。

 中国の国外に設置された「秘密警察」がまた問題になっている。というのも、アメリカのニューヨークで4月17日、秘密の警察拠点を運営していたとして、中国人2人が米FBI(連邦捜査局)に逮捕されたからだ。

 2人は盧建旺容疑者(61)と陳金平容疑者(59)で、どちらもアメリカの市民権を持っていた。2人は中国の福建省出身者向けのイベントを開催する団体を運営していた。

 アメリカでは外国の政府のためにアメリカ国内で仕事をする場合は司法省に「外国エージェント」として登録することが決められているが、それをしないで、中国政府のために暗躍していたとされる。

少なくとも53カ国に102カ所の拠点

 中国が世界各地に設置しているこうした警察拠点については、スペインの非営利組織「セーフガード・ディフェンダーズ」が2022年9月に公開した「海外110」という報告書によって広く知られることになった。その報告書には、日本を含む世界53カ国に、少なくとも102カ所もそうした拠点があると記されている。

 これは明らかな主権侵害で、各国の政府が非難する事態になった。中国政府はこうした警察拠点を各地に設置して何をしているのか。そして日本にもある拠点の実態はどういうものなのか。

1年半足らずのうちに国外にいる中国人23万人が「自発的に」帰国

 実は筆者は数年前から、アメリカの元情報機関の関係者らからこんな話を聞いていた。

「FBIやCIA(米中央情報局)など米情報機関は、アメリカで中国人が忽然と姿を消すケースがかなり増えているのを把握しており、これまでにかなり捜査を進めている。この問題について近く世界で問題提起をしていくことになる」

「海外110」の報告書によれば、中国公安部の副部長である杜航伟は、2021年4月から2022年7月までの間に23万人の在外中国人を「自発的に」帰国させたと述べているという。それ以外の期間を入れるとさらに帰国者は増えると考えられるが、言うまでもなく、他国で法執行のような活動をするのは主権侵害にも当たる。

 そして先の元米情報機関の関係者によれば、中国側の言う「自発的」というのは事実とは違うと指摘する。

「外国で中国人が中国当局によって『誘拐』されているケースもある。また中国人がこうした作戦の中でスパイとして協力させられることもある」

 中国のこうした活動の背景にあるのは、習近平国家主席が2014年に始めた汚職を一掃する「キツネ狩り」と呼ばれる作戦だ。汚職撲滅という名目で、習近平は150万人とも言われる公務員らをパージ(粛清)しており、それによって政敵を排除して自身の権力基盤を固めてきたとも言われている。

 無党派の非営利団体である米フリーダムハウスによれば、この「キツネ狩り」作戦には、国家公安部を筆頭に、国家安全部や人民解放軍が深く関与している。それが国外でも広く行われ、汚職に関与していると見られる中国人を他国で捕まえて「自発的に」帰国させ、罪を償わせてきた。同時に、国外にいる反体制派の中国人に対して監視や脅迫を行い、時にはその対象者が忽然と姿を消すケースも起きてきた。

反体制派に監視の目

 海外でそうした活動を担っていたのが、中国が勝手に設置した警察の出先機関だ。それが今回、アメリカで中国人2人が逮捕される結果となった。ただニューヨークでは、同様の罪で中国人が逮捕されたのは今回が初めてではない。2020年から2022年の間で、少なくとも20人以上の中国人が起訴されている。

 例えば、2022年10月に中国共産党中央規律検査委員会の支部から指示を受けた中国人がニューヨークのホテルを拠点に在米中国人を監視し、強制帰国させようとした疑いで逮捕されている。また別のケースでは、在日中国人の情報を集めたり、中国工作員に対する調査の証拠品を破壊したりするよう、米国国土安全保障省の職員らに対し多額の謝礼を支払っていた事件も摘発されている。

 2022年5月には、中国のスパイ組織である国家安全部(MSS)の工作員4人がニューヨークで逮捕されたのだが、逮捕の理由は、中国からの亡命者や不満分子、反体制派らの世話役として有名だった在米中国人活動家を協力者にして、反体制派の中国人の情報を受け取っていたからだった。とんでもない話である。

 加えて、大学関係者や元捜査官、中国人留学生なども協力者にして情報収集などを行なっていたケースもあった。こうした例は枚挙にいとまがない。

 FBIのクリストファー・レイ長官は2020年に、中国政府による国外での活動は、反汚職のためなどではなく、反体制派を取り締まる目的であると断言している。その上で、「例えば、キツネ狩りでターゲットとされた中国人の所在がつかめない時は、中国政府はアメリカに暮らす家族に使者を送り、『すぐに中国に帰国するか、自殺するか、どちらかを選べ』という選択肢を伝えている」と主張する。

 確かに、彼らの手口はマフィアさながらだ。中国国内にいる家族や身内を「人質」にして、在米中国人を脅迫したり、嫌がらせを行ったりして、強制帰国させる。中国に残る身内には、要職などからの追放や住居の破壊、子どもが学校に通えないようにしたり、公的機関の利用や社会保障を無効にしたりする。パスポートを使用できなくする、ホテルの予約をできなくする場合もあるという。

3_20230423112501 都内にある「秘密警察」拠点と国会議員

 そしてこの中国の警察拠点は、日本にも存在している。セーフガード・ディフェンダーズの報告書で確認できるのは2カ所で、一つはホテルになっている東京都千代田区にある十邑会館と、もう一つは江蘇省南通市に関連する「出先機関」だ(報告書では場所はわからないと見られているが、福岡県にあると見られている)。

 さらに問題なのは、千代田区の十邑会館を拠点としている日本福州十邑社団聯合総会は、日本の現役国会議員である松下新平参議院議員を高級顧問に就任させているこことだ。

 十邑会館が紹介している2020年7月8日に行われた就任の「授与式」のリポートには、「7月8日下午,日本福州十邑社团联合总会高级顾问授聘仪式在东京十邑会馆顺利举行,现任日本自由民主党财务金融部会长、参議院議員松下新平先生受聘为我会高级顾问」とある。

 翻訳すると、「7月8日午後、日本福州十邑社団聯合総会の高級顧問任命式が東京の十邑会館で滞りなく行われ、現自民党財務金融部長で参議院議員の松下新平氏が、高級顧問に任命されました」ということらしい。

 参議院のHPに掲載されているプロフィールによれば、宮崎県選出の松下議員は、「自民党人事局長、自民党外交部会長、自民党財務金融部会長、参議院政府開発援助等に関する特別委員長、参議院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員長。参議院政治倫理審査会会長」と要職にある。そんな影響力のある議員が、日本にある中国の警察拠点に深く関係しているとなれば国民を不安に陥れるので、きちんと説明を行うべきではないだろうか。

 イギリスやアメリカでも、現役の国会議員が中国のスパイ工作の餌食になっている。そうした工作には、国家安全部(MSS)や中国共産党の情報機関である統一戦線工作部(UFWD)が関与している。公安や検察などに加えて、こうしたスパイ機関が海外で行われている一連の工作に関与しており、その規模がかなり大きいことがわかる。

 さらに日本では、すでにわかっている2カ所以外にも複数か所、中国の警察拠点があると指摘されており、公安警察なども警戒を強めている。

 最後になるが、今回のニューヨークでの摘発で、特筆すべき問題がある。こうした活動の中で、警察やスパイのように暗躍している中国当局者が、日本でも広く使われているあるアプリを悪用していることだ。それは、オンライン会議サービスの「Zoom」(ズーム)である。

言論封殺に使われたZoom

 米情報機関関係者が言う。

「テレビ会議ができるアプリを提供しているZoomの幹部で、中国政府との窓口役をになっていた人物が、中国政府の指示を受けて天安門事件がらみのZoomのミーティングを遮断していたことが判明、22年12月にアメリカで逮捕されている」

 Zoomを提供しているZoomビデオコミュニケーションズ社は、中国出身で、現在はアメリカ国籍を取得している袁征(エリック・ヤン)が創業した企業だ。

 Zoomは世界中で利用されるようになっているが、中国政府による干渉を懸念する声は以前から上がっていた。実際、習近平政権は、Zoomに触手を伸ばし、中国共産党に反発する中国人を抑え込もうとしている。そこまでしてでも党と政府に対する批判を封じ込め、民衆が行動を起こそうという“芽”の段階で摘み取ってしまおうという強権的思想の表れだ。

 Zoomによる情報漏洩のリスクを回避するため、台湾政府や米情報機関、オーストラリア軍、ドイツ外務省などではZoomの使用が禁止されている。さらに、財閥系企業など、日本でもZoomの使用を禁止にしているところも少なくない。

 ここまでいろいろバレてしまうと、もはや言い訳のしようもないのだが、中国政府は悪びれるそぶりも見せず、事実を否定している。国外における「秘密警察」の活動を停止するつもりなどさらさらないのだろう。

 中国の治安に対する予算の額は、軍事予算に引けを取らないと言われています。現習近平体制を死守するため、反体制派の監視・摘発に膨大な予算を投じている実態が、この「秘密警察」の存在と活動からも汲み取れます。

 裏を返せば、そこまでしなければ体制の安定を損なう事への恐れが払拭できないのだと思います。旧ソ連のスターリンも同様でしたが、独裁の頂点にいる者の避けがたい不安の表れなのでしょう。

 ただ、経済の停滞と高齢化の進展により、中国の財政赤字は急増し、今年は74兆円に上ると予想されています。更には25年には2.3倍の170兆円を突破するとの見通しもあります。そうなれば治安維持関係にこれ以上の金を投入できなくなるでしょう。それが中国の体制に影響が出てくることを期待したいと思いますね。

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2023年4月21日 (金)

米NYで摘発された中国「秘密警察」 その存在を否定する中国側の反論は「明らかなウソ」 世界53カ国に存在、日本にも

9_20230420142901  他国の中に秘密の警察をつくり、治外法権のように在留中国人を監視する、中国の「秘密警察」。明らかな主権侵害行為ですが、平然とやってのけるその様は、まさに「権威国家」の象徴です。

 アメリカで摘発されたこの「秘密警察」、中国はいつものようにその存在を否定しています。日本にも以前取り上げたように、複数箇所設置されているようです。デイリー新潮がその実態に迫ります。タイトルは『米NYで摘発された中国「秘密警察」 ねつ造と言い張る中国側の反論は「明らかなウソ」』(4/20公開)で、以下に引用して掲載します。

23041191705_2345x416 チャイナタウンに秘密警察署

 米司法当局は17日、ニューヨーク市で中国の秘密警察署を運営したとして、中国系米国人の男2人を逮捕した。彼らは2022年2月ごろ、同市のチャイナタウンに福建省出身者向けの懇親会などを行う非営利団体の事務所を開設したが、実態は同省福州市の「警察署」だったという。

「昨年10月、FBIがこの“警察署”を捜索しました。男2人は、中国の体制に批判的な人物の言動を監視し、問題のある人物には嫌がらせを行うだけでなく、強制的に帰国させることまで行っていました。さらに2人は中国公安当局からの電信記録を破棄するなど、捜査妨害を行っていたことも発覚。アメリカ政府の許可なく中国政府の代理人として警察活動をしていたわけで、NY州の連邦検事は『中国公安部はNYのど真ん中に警察署を開設し、アメリカの主権を侵害している』と主張しています」(外信部記者)

 中国外務省は18日の会見で「中国は他国への不干渉政策を維持しており、このような警察署は存在しない」と全面否定したが、秘密警察署は少なくとも53か国、102か所にのぼることがスペインの人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ」によって昨年、報告されている。日本も例外ではない。東京都内に2か所あり、そのうち秋葉原のビルにある拠点は、やはり福建省福州市の名前が入った一般社団法人となっている。

「こうした中国による監視体制構築のルーツは、習近平体制が発足した2012年以降から始まった『キツネ狩り作戦』にあります」

 というのは、元産経新聞中国総局特派員で、中国問題を研究する一般社団法人「新外交フォーラム」代表理事の野口東秀氏。

「キツネ狩り作戦」とは、海外に逃亡した汚職官僚を追跡し、中国に連れ戻すというもの。相手国への通告はおろか、法律も守らず、勝手に捜査することが問題視されており、2021年7月には男性汚職官僚の摘発を勝手に米国内で行ったとして、NY連邦大陪審がストーカー行為などの罪で中国人捜査員9人を起訴している。彼らは汚職官僚を強引に帰国させようと自宅におしかけ、

「中国に戻って10年服役すれば、家族は無事だ」

 と書いた置き手紙を残したほか、中国にいた官僚の父親を渡米させ、帰国しなければ家族に危害を加えると脅迫した。一連の作戦には、武漢市公安局の捜査員も一緒に渡米していた。

日本でもやりたい放題

「秘密警察はこうした活動を汚職官僚だけでなく、各国に住む中国人にまで広げるための拠点です。福建省をかたるのは華僑が多いこと、海外進出する企業が多いことが挙げられます。チャイナタウンや中華料理屋の入っているビルの1室を借りて拠点として活動しますが、総司令塔はもちろん、北京の安全系統の部門ではないかと思われます。今回逮捕された2人だけで担当区域を担うのは大変ですから、その下に情報係となる協力者が多数います。中国人が多いでしょうが、アメリカ人もいるでしょう」

 習体制を批判しており、しかもそれをSNSなどで発信している――こうした人物情報を徹底的に集め、悪質と思われる人物には「故郷にいる家族に危害が加わる」などと脅して帰国を促すのだという。

 中国人民解放軍による日本へのサイバー攻撃に関与したとして、中国籍の留学生に逮捕状が出た事件(2022年)など、留学生や研究者が本来の身分を隠して技術情報を盗んだり流出させたりするケースも日本では懸念されている。

「日本はスパイ天国です。天安門事件以来、中国へ帰っていない人。飲み屋や食事の席で習近平の悪口を言っている人など、反政府系の人まで、協力者たちの提報によって炙り出されていくのです。今回のように、運営している人間を捕まえても、その下にいる多くの協力者まで摘発しないと、意味はないように思いますが法的には難しい話。いずれにしろ、日本にはスパイ防止法が必要でしょう」

 ちなみに、中国当局は自身のやっていることについて「免許証の更新手続きやコロナ禍で帰国が難しくなった同国民のサポートなどを行っている」と主張している。

「中国だって、免許更新手続きは警察の事務です。それを勝手に代行していいのでしょうか。さらにいえば、例えば免許更新なら、ネット申し込みで9割はできます。残り1割は帰国した際に、健康検査を受ければそれで完了する地域もあります。コロナ禍で困っている中国人を支援するのは、大使館の仕事でしょう。ウソは明白です」

 外国、とりわけ民主主義国にいる中国人の影響力(デモ、記事掲載、SNS発信など)は無視できないということなのだろうが、徹底的に監視網を敷く習体制の在外中国人への締め付けは当面、続くことになりそうだ。

 蟻の子一匹も逃さない、と言うことでしょうが、世界に散らばる中国人を完全監視など不可能なことでしょう。それでもこうした監視の目を崩さないのは、よほど「体制をひっくり返されるのが怖い」という事への裏返しにもなります。

 体制批判の中国人が、その中国人の手によって摘発されるのは、日本にとってはある意味どうでもいいのでしょうが、問題は日本に入り込んで勝手にそういう監視行為をされることでしょう。その逆の状況、つまり日本の警察機構が、中国に勝手に分室をつくって、日本人の監視をしたら、中国当局はどうするでしょうか。当然主権違反行為で逮捕されるでしょう。

 日本にも中華街は多くの都市にあり、そこにこう言う組織が出来れば、実態確認が難しく大きな問題です。更には中国人工作員を呼び込み、スパイ行為をする基地になるかも知れません。それを防止するためにも「スパイ防止法」を早く立法化しなければなりません。多くの人から必要性が指摘されているこの法律を、未だに国会に上程しない政府や国会議員は、その成立を躊躇する理由を明確にしてほしいものです。

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2023年4月 5日 (水)

青沼陽一郎氏:外国人を簡単に拘束する中国、中国公安の取り調べを受けて感じたその傲慢さ

Images-3_20230403103401  アステラス製薬の社員が中国当局にスパイ容疑で拘束されました。林外相が中国を訪問し、抗議と早期解放を要求していますが、そもそも何故スパイ容疑なのか判然としません。過去にもこういうことが度々起きています。もちろん日本人だけではありません。

 こうした中国の行為の実態はどう言うものか、作家でジャーナリストの青沼陽一郎氏が、JBpressに寄稿した記事にその詳細を見てみましょう。タイトルは『外国人を簡単に拘束する中国、中国公安の取り調べを受けて感じたその傲慢さ 難癖のような理由で執拗な取り調べ、対応を間違えればきっと拘束されていた』(4/03公開)で、以下に引用します。

 中国の首都・北京で先月、アステラス製薬の50代の日本人男性が拘束された。

 中国外務省は3月27日の記者会見で「この日本人はスパイ活動に関わり、中国の刑法と反スパイ法に違反した疑いがある」として、司法当局が拘束して取り調べていることを認めている。

 中国では2014年に反スパイ法が施行された。その後、少なくとも17人の日本人が拘束され、11人が刑期を終えるなどして帰国。1人は服役中に病死。2人が服役中、1人が公判中、1人は逮捕されたまま。そして、先月にもう1人だ。

 ところが、具体的にどういう行為が法律に違反するのか、反スパイ法の規定が曖昧で、今回も中国政府は詳しい内容を明らかにしていない。

 それどころか、27日の会見で中国外務省の報道官は、「ここ数年、日本人が同様の事件をたびたび起こしており、日本側は、国民への教育と注意喚起を強化すべきだ」とまで吐き捨てている。

 ならば、いい機会なので私が中国国内で受けた“仕打ち”について、いま一度披露しよう。

カドミウムで汚染されたコメ

 私は中国で田んぼの写真を撮っていただけで、公安(警察)に同行を求められ、執拗な取り調べを受けたことがある。湖南省でのことだ。

 湖南省といえば、省都の長沙で2019年7月に50代の日本人男性が拘束され、今年2月8日にスパイ活動に関わったとして、懲役12年の判決が言い渡されている。また、先月27日から中国を訪れている、台湾の馬英九前総統が先祖の墓参りに訪れたばかりだ。そして、毛沢東の出生地として知られる。

 長沙から車で約2時間。衡陽市衡東県大浦鎮を訪れたのは、2015年7月のことだった。

 その当時、ここから隣の広東省広州市圏に出荷された米から、許容量を超えるカドミウムが検出されて問題となっていた。その前年には子どもたちの血中鉛濃度が国の基準値を最大で3倍以上にもなっていたことを、国営の新華社通信やAFP通信が伝えている。地元の化学工場から排出された汚染物質が原因とみられ、この工場は捜査のため一時閉鎖されたとされる。

田んぼの風景を撮影しただけで警官が

 その大浦で高速道路を降りたあたりから、車窓に黒いフィルムを貼ったセダンが私の車のあとをずっとつけてきていた。最初は白で、しばらくすると黒い車体に代わった。

 監視されていることはわかった。目立つことはしないほうがいい。だから、工場跡地や田園をまわりながらも、写真は車の中から撮った。その度に車を停めると、セダンも一定の距離を保って停まった。

 そして、そのまま帰路に着こうと高速道路の入口に近づいたところで、「ここなら、大丈夫でしょう」と通訳の青年が言った(あとから振り返ると、彼も中国当局と結託していたのかも知れない)。

 揚子江より南の地域では二期作が主流で、当時も田植えの済んだ隣の田圃で収穫作業が行われていた。そんな珍しい風景を、はじめて車から降りて写真に撮っていると、背後から声がした。「中国公安」と文字の入ったパトカーが止まっていて、2人の制服の警官が立っていた。

「外国人が写真を撮っているという通報がありました。通報を受けた以上、住民に説明をしなければならない。手続きのため、ご同行いただけませんか」

 初老の警官に言われて、断る術もなく、連れていかれたのは町の中心を少し外れた場所にある古びた地元警察の建物だった。

まるでチンピラのような共産党書記

 そこの会議室のような場所で、入口から一番遠い壁際の机の向こうに座らされると、初老の警官に続いて、スマートフォンだけを持ってビーチサンダルを履いた男が入ってきた。痩身に張り付くような派手なシャツやパンツからして、チンピラのようにしか見えないこの男が、地区の共産党書記だった。さらにパソコンやビデオカメラを持った私服の男たちが入って来る。

 まずパスポートの提示を求められた。それから、「録音機器や、他に小型のカメラがないか、確認させてください」と言って、手荷物のすべてを隣の部屋に持っていってしまった。

 扉の隙間から、所持品を写真に撮るシャッター音がする。私の目に見えないところで、全てがいじくられる。あとで返された時には、財布のクレジットカードまで抜き取られて、配置が変わっていた。

「ここへ来た目的はなんだ?」

 ビデオを回しながらの尋問がはじまった。口調がきつくなっている。

「観光」と答える。観光ビザで入国していたからだ。

「観光なら、その旅費はどうした? 渡航費用は? 滞在費は? 誰が出している?」

 費用は自分で用意している、と答える。そもそも、そんなことまで答える必要がどこにあるのか。

 すると警官はすぐに、「あなたは、長沙市内の○○というホテルに宿泊している」と言い当て、さらにこう続けた。

「あなたの年収では、あのホテルに泊まるのは無理だ」

 そして彼の次の言葉に驚かされた。

「東京にある出版社から、中国の旅行代理店に送金があったことを我々は知っている」

「代理店の担当者は、その資金で旅程を組んでいることを認めている!」

 東京からの送金実績まで事前に把握しているとは思いもよらなかった。当局によって自分が裸にされている不気味さと恐怖を実感する。

堂々巡りの押し問答

「そこから依頼を受けて、調査活動が目的でここへやって来たのだろう!?」

 反スパイ法のことは知っていた。調査活動、すなわちスパイの容疑をかけているのだとすれば、認めるわけにはいかない。調査ではない、取材だ。

「取材なら、なぜ取材申請をしなかった」

「なぜ、観光と嘘をついて入国したのか」

 ここへ来るまでに、私は吉林省の長春で、入場料を払って満洲国の皇帝だった溥儀の皇宮と資料館を見てきた。陝西省の「梁家河」という寒村も訪ねた。習近平が若い頃、下放されて暮らしていた“聖地”と呼ばれる場所だ。そこはすでに観光地化して入場料をとっている。習近平の生い立ち調査が目的とはいえ、これを観光ではないと言い張る中国人がいるだろうか。

 その旨を伝えると警官は黙った。ところが、それまで黙っていた共産党書記が蒸し返す。

「だけど、わからないな。出版社からの送金でここまで来ているのなら、それは調査だろう!」

「そうだ。どうなんだ」

 そこから堂々巡りと押し問答が続く。

 中国側は執拗に同じ質問を繰り返す。繰り返しの説明は、疲労を伴う。なるほど、こうしてイライラと疲れの蓄積で、罪を認めさせようという魂胆か。

 取り調べ中も開け放たれたままの扉から、入れ替わり立ち替わり室内を覗きにきた地元の住人がスマートフォンでこちらの写真を撮る。まるで動物園のサルを見るような目つきだった。不愉快だった。これが正当な司法手続きと言えるのか。

「帰れないのは誰のせいなのか」

 やがて何時間も経過し、とっくに日が暮れて食事も与えられないでいると、肥った私服の中年男性が部屋に入ってきた。この警察の署長だった。私の正面に机を挟んで座ると言った。

「私が制服から私服に着替えて、まだ帰れないのは誰のせいだと思いますか」

 主張を曲げない私を責めた。そうやって威圧する。

「先生、まだこんなことを続けますか」

 では、どうしたらいいのか、こちらから訊ねた。

 すると、真っ白なA4サイズの紙とボールペンを出してきて、これから言うことを日本語で書くように指示された。とにかく「事情説明」と題された、いわば中国共産党が好む「自己批判」を書かせようとする。

 彼らとしても面子を保たなければ、私を解放できなかったのだろう。とはいえ、相手の都合のいいことばかりでは、どんな罪に問われるか、わかったものではない。そこで相手の意向と妥協点を探りながら文章を構成する。異様な労力に屈辱感が胸元から湧き上がる。この屈辱に先行きの見えない恐怖が私のトラウマに変わる。

 この直筆の書面と尋問形式の調書に指印させられて、ようやく解放された。カメラにあった写真データは全て消去された。外には街灯らしいものもなく、あたり一面が真っ暗だった。

中国は信用できるか

 写真を撮る自由さえない中国。執拗に罪を認めさせようとする地元警察。土壌汚染の事実など、都合の悪いことは黙らせたい。中国共産党の言論封殺の本性がそこにある。

 解放されたとはいえ、一時的に拘束された立場からすれば、法律に違反した取り調べというより、嫌がらせだった。地方の小さな村にまで浸透した権威主義のゴリ押しと、外国人の粛清。

 日本のパスポートを開けば、最初に外務大臣の名前でこういう記載がある。

【日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。】

 中国の外務省が表明したように「日本側は、国民への教育と注意喚起を強化すべきだ」とするのなら、それはたった一言で済む。

「中国は、およそ信用に値する国ではない」

 それだけのことだ。

 青沼氏の経験を元に考えれば、アステラス製薬の社員の拘束も、似たような理由であろうと推察されます。ただ青沼氏は聴取で終わっているので、社員はもう少し疑いが強いのかも知れませんが、おそらくスパイ行為はしていないと思われます。そのスパイ行為の定義も曖昧ですが。

 写真撮影と言えばサウジアラビア在住の時に、私の同僚がサウジ直轄の石油会社「アラムコ」の建屋を撮影した角で拘束されました。発電所などのインフラや国営企業の写真撮影は犯罪と見なされます。様々な関係者が動いて、半日で解放されましたが、独裁国家での写真撮影は特に注意が必要です。

 青沼氏の例は写真撮影でしたが、刑務所に送られた日本人はどう言う内容の罪だったのでしょうか。いずれにしろ取り調べも弁護士なしで一方的、裁判も民主的な手続きなどないのでしょう。

 中国にはこの事例を含めて様々な政治リスクがあります。青沼氏の言うように、信用に値する国ではないのです。これから中国で事業を行おうとしている会社は是非思いとどまった方がいいでしょう。また、今中国で事業を行っている会社も、できるだけ早期に撤退することが、社員の安全のため必要だと思います。

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2023年2月25日 (土)

福島香織氏:武漢で始まった「白髪革命」デモ 保険制度改革に激怒する中国の老人たち、「政府を倒せ」とシュプレヒコール 

Photo_20230224164601  中国で医療保険制度改革が発端で、直接の影響を受ける高齢者のデモが、各地で勃発、特に武漢では退職工員によるデモが大きなうねりとなって、地方政府を揺さぶっています。

 習近平政権の3期目のスタートか半年弱、その間白紙デモや、ゼロコロナ解禁後の感染大爆発、そして気球問題など矢継ぎ早に政権には面白くない出来事が続いていますが、この所謂「白髪デモ」もそれに一枚加わりました。

 フリージャーナリストの福島香織氏がJBpressに寄稿したコラムにその詳細を見てみましょう。タイトルは『保険制度改革に激怒する中国の老人たち、「政府を倒せ」とシュプレヒコール 革命の聖地、武漢で始まった「白髪革命」デモ』(2/23公開)で、以下に引用して掲載します。

 中国・武漢で起きた退職工員たちによるデモがただごとではないと話題になっている。シュプレヒコールの中で「反動政府を打倒せよ」という言葉が叫ばれていたからだ。

 昨年(2022年)11月に南京の大学から始まった、若者が白紙を掲げてゼロコロナ政策などに抵抗した「白紙革命」では、「共産党下台(共産党は退陣しろ)」「習近平下台(習近平は退陣しろ)」という叫びがあった。今度は退職した老人たちが立ち上がる「白髪革命」で政府打倒の呼びかけが起きたのだ。しかも場所は武漢という「革命の聖地」である。

 習近平は第3期目総書記の任期継続を決め、新型コロナに対する決定的勝利を先日宣言し、3月の全人代に万全の体制で臨もうとしている。しかし、この社会の動揺はその足元をすくいかねない状況だ。

1_20230224164601 政府打倒を叫ぶ白髪交じりの退職者たち

 武漢で「白髪革命デモ」が起きたのは2月8日、そして15日。デモの目的は、中国で目下全国的に進められている医療保険改革を撤回させることだ。

 最初のデモは2月8日、国有企業である武漢鉄鋼の退職工員を中心とした元工場労働者たちによって行われた。彼らは市政府前に集まって、医療保険新政策(医保新政)反対のスローガンを掲げてデモを行った。その数はゆうに1万人を超えており、国内外の耳目を集めた。

 デモ参加者によれば、2月1日から始まった医保新政により、武漢市だけで200万人近くいる退職工が悪影響を受けているという。政府がこの政策を撤回するなりして問題を解決しなければ、15日にさらに大規模な抗議を起こす、と訴えた。8日は雨で、政府市庁舎前の広場には、退職工らが市庁舎の出入り口をふさぐように詰めかけていた。敷地内は警察が厳戒警備を敷き、緊張感が漂った。

 武漢政府は結局、手荒なことはほとんどせず「改革を一時的に緩和する」と譲歩の姿勢をみせ、その日の朝から始まったデモも夜には解散となった。だが、改革撤回を宣言をしなかったため、2月15日に再び武漢でデモが起きた。

 15日のデモは武漢市の中山公園が集合場所で、そこから市政府に向かった。そのルートは辛亥革命の始まりとなる武昌蜂起と同じだった。

 参加者は一時、数十万人に膨らんだという情報もある。高所からの映像がネットに上がっていたが、公園から市政府までの道が群衆であふれていた。参加者の多くが白髪交じりで、国内外でこのデモを「白髪革命」と呼ぶようになっていた。

 2月15日にこのデモが起きるとわかっていた当局は朝から地下鉄を封鎖し、退職者が暮らすコミュニティの門を封鎖した。だがそれでもこれだけの人が集まったということが国内外で衝撃を与えた。大勢のデモ参加者が警察に連行されたが、当局はその様子がメディアやSNSを通じて広がらないように幕で隠したりしていた。辛亥革命の始まりの土地で、デモの鎮圧には相当気を使ったようだ。

 このデモでやはり注目すべきは、警察と対峙した群衆から「反動政府を打倒せよ!」というシュプレヒコールが起きたことだ。途中、警官隊と小競り合いになり、デモ隊の老人が突き飛ばされたときに、「反動政府を打倒せよ!」という叫びが一斉にあがった。

 この武漢デモに呼応するように、同日、大連でも数千人の退職者デモが起きていた。大連のデモ鎮圧は注目されていなかった分、過激だった。参加者たちはスマートフォンを掲げながら革命歌の「インターナショナル」を歌い、それを警官隊が催涙スプレーなどを吹きかけて追い払っている様子がネット上の動画で拡散された。

社会保険制度は崩壊の危機

 実は2月初めから上海、広州、鞍鋼などの都市でも同様のデモが起きている。上海と広州では、デモを受けて地元政府が医療保険新政策の棚上げを約束したという。

 中国の医療保険は1998年から国有企業を中心に導入された。その仕組みはシンガポールの医療保険制度を参考にしているという。具体的には、医療保険料は月々の工員の賃金と工場側からそれぞれ徴収され、「個人口座」と「共通口座」に分けて積み立てられる。個人口座は、少額の外来診療や医薬品の購入などに比較的柔軟に使える。一方、共通口座の資金は社会保険基金の一部を構成し、保険加盟者が病院で入院、手術などの高額治療を受ける際の補助金となる。

 英BBCがその仕組みをわかりやすく説明している。たとえば月収1万元の従業員の場合、月収の2%にあたる200元の保険料を給与から天引きの形で納め、工場側が8%の800元を保険料として納める。保険会社(地方政府)は、あわせて1000元の保険料を受け取ることになる。そして、個人が納めた200元と、工場が納めた800元のうち380元を合わせた580元を個人口座に積み立てる。800元のうち残りの420元は共通口座に積み立てる。ちなみに、地方ごとにこの保険料の比率は異なる。

 個人口座の積み立ては目的が指定された強制貯金みたいなもので、共済機能はない。共済機能があるのは社会保険基金に組み込まれる共通口座のほうだ。

 武漢当局の話だと、全市の医療保険資金の6割が、若者や健康な人たちの個人口座に使われないまま貯められているという。現役の労働者はそんなに医療費を使わない。また、彼らは個人口座に振り込まれた医療保険積立金を貯蓄だとみなしており、病気になってもそれを使わないのだ。

 さらに、彼らはもしも「入院しても入院しなくてもどちらでもいい」という状況になった場合、共通口座から医療費を賄って入院しようとする。このため武漢の入院率は長年20%を超えており、共済に使われる社会保険基金の資金不足が深刻になっていた。

 2020年、中国で、労働者向け社会保険基金に余剰があるのはわずか6省だけ。事実上、中国の社会保険制度は崩壊の危機に直面していた。

 さらに病気にほとんどならない若い労働者が積み立ててきた大量の個人口座資金を一部企業が密かに米や小麦、油など非医療物資の購入に充てるなどの汚職が発覚する事件もあった。

 こうしたことから、中国政府は2021年に「全職工の基本医療保険外来共済保障メカニズムを健全にするための指導意見」を発布し、個人口座をなくし、共済保障に利する形で制度改革を行うようにと通達した。これを受けて、各省が今年に入って医療保険新政策を打ち出したのだった。武漢は、まさに段階的に個人口座に振り込む資金を減らしているところだった。

 武漢の改革では、個人口座への振り込みを減らす代わりに、本来個人口座から負担する外来診療費の50%を共済口座から還付するとした。たとえば現在働いていて月収1万元の人は、個人口座に医薬品購入補助金として毎月200元振り込まれる。企業が払う800元はすべて共済用の共通口座に入るが、外来診療のときの費用の50%はそこから還付される、というわけだ。

高齢者も若者も溜め込んでいる政府への不満と不信

 ここで納得いかないのが、武漢の退職労働者、退職工たちだ。

 退職工は、すでに払い終わった社会保険料から毎月260元あまりが個人口座に医療補助金として振り込まれていた。だが改革後は、これが80元ほどに減らされるという。

 ただ、病院での診療費補填率は60%に引き上げられる。当局側は、実際は退職工に向けられる医療費は現役労働者の4倍になり、退職工の方が得をするのだ、と説明する。だが、目に見える個人口座への振り込み金額が減ることで、退職工は政府に納めた医療保険費を政府に奪われた、と感じてしまうのだ。

 ちなみに診療補填を受ける場合、「指定の大病院に限る」「初診料を除く」といったいくつもの条件があり、実際は全体的に医療費は高くつくようになると多くの人たちは感じている。

 個人口座の積み立て資金で購入できる医薬品についても、安くて効果的なジェネリック薬を対象外にするなど、改悪されたという見方もある。ほかにも葬儀補填費として7万元支給されていたが、3万元に減額されている。

 建前は“医療保険制度の最適化”だが、実際はコロナ禍の3年間で多くの地方政府の財政がひっ迫し、社会保険基金が底をついてしまったため、老人向けの医療費削減策に迫られた、ということだろう。

 中国の一般市民は、中国の高齢社会化に伴って老人向けの社会保障制度がおそらく今後削減されていくことを予感しており、今回の医保新政に対する反応も激しいものになったといえる。

 日本では、高齢者の社会保障費用が若者の負担になっているとして、若い世代側から「高齢者の集団自決論」まで唱えられている。中国でそうした「高齢者 vs.若者」の分断の形にならないのは、若者だけではなく高齢者も政府に対する長年の不満と不信を溜め込んでいるからだろう。

 また、国家・地方公務員を含めて政府側の人間はもともと医療費を全額公費で賄われており、「政治家・官吏 vs.民衆」の分断の方が大きいという背景もある。問題は政府とその姿勢にあり、「我々は老いも若きも『剥奪される側』だ」という認識で共通しているのだ。

 なので、武漢の白髪革命では「団結こそパワー」というスローガンが掲げられ、退職した高齢者だけでなく現役労働者にも若者にも共感が広がっている。むしろ、若者の抗議運動「白紙革命」と高齢者「白髪革命」がリンクする可能性を指摘する人が多い。

革命もコロナも武漢から始まった

 この「白髪革命」の成り行きにチャイナウォッチャーたちがとりわけ注目しているのは、場所が「武漢」ということもある。

 武漢は辛亥革命が始まった武昌蜂起の起きた土地。そして2020年に最初に新型コロナの洗礼を浴び、その後も激しい感染と長いロックダウンを経験した。多くの死者を出し、その多くは高齢者だった。今回のデモ参加者はその厳しいコロナ禍を生き抜いた老人たちでもある。

 そして彼らの年代は、文革を経験し、その前の大躍進後に起きた3年大飢饉も生き残った人たち。つまり、中国人の中で最も中国共産党の政治に振り回されながらも、それに耐えて生き抜いてきた世代だ。そういう世代が、ついに立ち上がったというインパクトは大きい。彼らが我慢できないことに他の誰が耐えられようか。

 しかも、武漢は長江沿い五大都市、つまり上海、南京、武漢、重慶、成都の中心にある交通の要衝であり、武漢で起きたことは中国全土に広がりやすい。革命もコロナも武漢から始まり中国全土に広がった。

 中国は古来「易姓革命」の思想が根強い。徳を失った君主は天に見放される。自然災害が起き、民衆が蜂起し、王朝は交代させられる。習近平はすでに徳を失っている。民衆の敵意を腐敗官僚に向けさせようとしたり、巨大民営企業家に向けさせようとしたり、あるいは米国や西側先進国に向けさせようといろいろ画策しているが、結局、人民と正面から向き合わざるを得ないのではないか。禅譲か放伐か。民衆がそれを迫る日が意外に近いかもしれないと、この「白髪革命」を見て思う人もいるのである。

 最近どの局か忘れましたが、テレビで中国の影の部分、つまり農村部の貧困の状況が映し出されていました。多くの若者は都会に出て農民工として働いていますが、都会地区の人とは格差は縮まらない。若者がいなくなった結果、日本同様後継者も少なく、食糧自給率の維持が心配されていました。その疲弊状況は北京や上海の影に隠れていますが、この国の3分の一程度の人が、そうした中で暮らしているのです。

Img_a214fef96180960dcdbfb1c0fe4df65d1968  一方で広くて快適な建物の中で、食事も娯楽も医療も完璧に提供されている、都会地区の裕福な人たち向けの御殿のような高齢者施設が紹介されていました。その施設では習近平氏とのビデオ会話も行われていました。この記事の退職工員ではとても入居できない高額な施設のようです。

 まさに天国と地獄が同居する国、それが中国のようです。もともと共産主義は平等をその理念に置いているはずですが、中国はその理念とは全く逆の超格差社会です。そんな国が長く続くわけがないと思いますね。今は徹底的な監視と強権で押さえつけていますが、「白髪デモ」がその崩壊の発端になるかも知れません。

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2023年2月15日 (水)

中国大型気球の狙いはインフラ破壊「電磁パルス」攻撃か 「人民解放軍が運用」と米国は名指しで批判

2302101754_1714x476  中国の偵察用気球は世界のあちらこちらで観測され、既にアメリカ空軍に複数個撃墜されています。何故この時期世界に拡散したのでしょうか。中国は民間の気象観測用などと嘯いていますが、アメリカの撃墜した気球の分析では、明らかに偵察用のようです。

 米中間の新たな火種になったこの気球問題、ジャーナリストの加賀孝英氏が、zakzakに寄稿した記事を紹介します。タイトルは『中国大型気球の狙いはインフラ破壊「電磁パルス」攻撃か 「人民解放軍が運用」と米国〝ブチ切れ〟中国射程にICBM発射実験決行』(2/13公開)で、以下に引用します。

ジョー・バイデン米政権が「主権侵害」に強い姿勢を見せている。米軍戦闘機が4日、南部サウスカロライナ州沖上空で、中国の「偵察気球(スパイ気球)」を撃墜したのに続き、10日と11日、12日、米国とカナダ上空を飛行していた国籍不明の物体を撃墜したのだ。米軍機が撃墜した飛行物体は計4件となる。こうしたなか、米軍がひそかに警戒をしているのが、大型気球による「電磁パルス(EMP)」攻撃だという。あらゆる電子機器を損傷・破壊し、電子機器を使用した通信・電力・交通などの重要インフラを使用不能にする。同様の気球が確認された日本も厳重な警戒と対応が必要だ。ジャーナリストの加賀孝英氏による衝撃リポート。

「米国は『中国潰し』の総攻撃態勢に入った。今回のスパイ気球事件は『米本土への直接攻撃』そのものだ。米国は絶対許さない」

外事警察関係者はこう語った。

米中関係が緊迫している。ご承知の通り、米国は4日、米本土に侵入、横断飛行した中国のスパイ気球を、米最新鋭ステルス戦闘機「F22ラプター」で撃墜した。10日、今度はアラスカ州上空に現れた物体を同様に撃墜した。国籍不明だが、中国の可能性が指摘されている。

外務省関係者は「異常事態だ。スパイ気球事件に抗議して、アントニー・ブリンケン国務長官は訪中を延期した。中国は猛反発し、米国が提案したロイド・オースティン国防長官と、魏鳳和国防相の電話協議を完全拒否した。米偵察機などへの報復攻撃まで示唆した。危険だ」と語った。

当初、中国外務省は「気球は民間の気象研究用」と説明していた。だが、米国は「国際社会を欺く虚偽の主張だ」と激しく非難している。

防衛省関係者は「米国は『スパイ気球は人民解放軍が運用している』とほぼ断定した。『米国に侵入したが、(レーダー網で)すぐには探知できなかった』『気球が狙った標的は米国や日本、台湾など、五大陸で40カ国以上』と説明した。スパイ気球の飛行ルートは、中国が攻撃目標とする大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射基地など、ことごとく重要軍事拠点だった。防空網を突破され、米国は激怒している」と語った。

バイデン政権は10日、報復措置を発表。スパイ気球の製造などに関与したとして、中国企業6社・団体に対し、米国製品・技術を事実上輸出禁止とした。14日に発効する。米国は今後、同盟国に呼びかけ、中国の半導体産業、人工知能(AI)産業など、徹底的に潰す方針だ。

米議会の反発もすさまじい。下院は9日、「419対0」の全会一致で、中国に対する非難決議を採択した。「あからさまな主権侵害だ」「脅威だ」と激しく批判した。

当然、米軍も警戒態勢を強めている。

 ハワイに本拠を置く米国陸軍第25歩兵師団司令官、ジョセフ・ライアン少将は8日、訪問先のフィリピン・マニラで、「米軍とアジアの同盟国は、戦う準備ができている」と、AP通信のインタビューに答えた。

米国防総省は9日夜、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地で、中国を射程に収める核弾頭搭載可能なICBM(大陸間弾道ミサイル)「ミニットマン3」の発射実験を決行した。「米国の核戦力の準備ができていることを示し」ている、との声明を発表した。

米国は中国に対し、ブチ切れている。なぜか。以下、日米情報当局から入手した驚愕(きょうがく)情報だ。

 「スパイ気球の狙いは、重要軍事拠点の機密情報の収集だ。だが、それだけではない。『気球に取り付けた兵器を想定した秘密攻撃訓練だった疑いがある』という極秘情報がある。小型の電磁パルス(EMP)兵器なら悪夢だ。米本土上空の高高度で爆破すれば、強力な電磁波で、米本土の電子機器を損傷・破壊し、通信や電力、交通などの重要インフラが使用不能になる。米国に約90基ある原子炉が、危機的状況に陥(おちい)る」

 ■日本も標的…中国の暴挙を許すな

スパイ気球と同様の白い球体は、日本でも複数回目撃されている。

2020年6月、仙台市や福島県の上空で、白い球体に十字状の物がぶら下がり、プロペラ状のものがついた飛行体が目撃された。21年9月にも青森県八戸市の上空で目撃された。

松野博一官房長官は9日の記者会見で、「昨年1月、九州の上空でも所属不明の気球が確認された」ことを明かし、「米国など同盟国と連携し、情報収集と分析に全力を挙げる」と語った。

全身全霊の怒りを込めていう。中国の暴挙を断固許すな。日本も標的にされている。日本は今年、G7(先進7カ国)の議長国を務めている。岸田文雄首相には、世界平和を死守する行動と覚悟が求められている。

中国は今月初め、親中派である林芳正外相の訪中を要請してきた。沖縄県・尖閣諸島周辺海域では、中国海警局船が連日わが物顔で侵入している。林氏は「尖閣諸島は日本固有の領土だ。中国の強奪は許さない。立ち去れ」と抗議できるのか。岸田政権は本当に大丈夫なのか。

 アメリカの怒りは相当のものです。三期目を迎えた習近平政権にとって、ゼロコロナ下の白紙デモ、人口減少の始まり、不動産不況のさらなる悪化、そして経済減速のスタートと立て続けにマイナスの影が打ち寄せています。

 そこに、身から出たさびとは言えこの気球問題、まさに暗雲立ちこめるこの状況、鬱憤晴らしで台湾侵攻などしないか心配になってきます。日本も安全保障面の手綱をしっかり締めて、対応しなければなりません。

 なおこの気球問題、以前日本にも飛来しましたが、松野官房長官の話にもあるように、「情報収集と分析」といかにも日本的対応で、特に軍事面での具体的反応はしませんでした。しかしそれは日本の反応を確かめる目的だったかも知れません。 

 それで世界の各地に飛ばしたとすれば、日本がリトマス試験紙だったのでしょうか。ただ日本の無反応は承知の上でしょうから、それはないでしょうね。いずれにしろ、領海侵犯を繰返されても懸念や抗議で済ましている日本は、この先どんな手を打ってくるか分らない中国に、本当に対峙できるのか心配になります。ましてや安部元首相なきあとの岸田―林ラインでは。

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2023年2月11日 (土)

中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」

Images-8_20230209150201  中国は春節を終え、国内の大移動は終了しましたが、ゼロコロナの解除後の感染爆発は下火となったとは言え、各地の火葬場は未だにごった返していて、火葬できていない人の列が延々と続いているという報道もあります。

 そうした中、経済再建に躍起となっている習政権ですが、李克強氏に代る首相李強氏は経済には素人と言います。経済音痴の習近平氏と並ぶ二人は、果たして中国経済の舵取りが出来るのでしょうか。

 その詳細を経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏が、マネー現代に寄稿した記事から、引用しましょう。タイトルは『中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」』(2/06公開)で、以下に掲載します。

絶対君主の習近平

ゼロコロナ政策の解除を機に、中国経済への期待が高まっているが、果たして本当だろうか。

中国は本格的な人口減少の時代に突入するなど構造的な問題を抱えており、中長期の見通しについて悲観的な見方を示す専門家もまた、増えているからだ。

中国は、肝心かなめの「統治のあり方」に疑問が呈されるようになっている。

このポリティカルリスクのネガティブインパクトは、想像以上に大きいようだ。

中国の習近平国家主席は昨年10月の第20回共産党大会で最高指導部の政治局常務委員に側近を引き上げた。常務委員会の総意による意志決定をやめ、毛沢東以来でもっとも強力な指導者になったと言われている。

習氏の経済分野への介入強化はかねてから懸念されていた。

習近平で限界を迎えた中国型「全体主義」

「国内の情報の流れを把握するなど影響力を持ちすぎる」との警戒から民間IT企業を厳しく取り締まったことで、世界の投資家の中国に対する信頼が揺らいだ。

その結果、民間部門で最も効率的なセクターの時価総額が数兆ドル規模で消失した。

不動産市場の低迷など経済が悪化していることから、短期的には締め付けが緩和されるだろうが、抜本的な方針転換が図られるとの期待は薄い。

むしろ、習氏への権力集中に伴い、専門家の意見を聞かずに密室で決定される政策が増加し、経済への悪影響がさらに拡大すると危惧されている。

そもそも中国の統治制度はどのような特色を有しているのだろうか。

米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、中国の統治制度を「地方分権的全体主義」と定義している(1月27日付日本経済新聞)。

中国共産党は1950年代初期、政治・経済を含むあらゆる分野の支配権を中央に集中させる全体主義の制度をソ連(当時)から導入したが、50年代半ば以降、「郡県制」という伝統的な統治手法を加え、その制度を改めた。

個人崇拝などで最高指導者の絶対的権威を確立する一方、行政の立案・運営の権限のほとんどを最高指導者が任命する地方の指導者に与えるものだ。

これにより、中国共産党はソ連より強固な一極集中の体制をつくり上げたことに成功した。

この制度の下に、地方の指導者は最高指導者の意向に沿った取り組みを競い、切磋琢磨してその実現に邁進したのだが、最高の成功事例は改革開放だったことは言うまでもない。

経済成長を巡る地方間の激しい競争が民間セクターの発展を可能にし、政治改革を伴わずに中国は高度成長を長年にわたり享受することができた。

しかし、こうした競争は環境破壊や所得格差の拡大、不動産バブルといった問題をもたらし、改革開放は今や負の側面の方が大きくなっている。

絶対権力者の「落とし穴」

現在、習近平体制が敷こうとしている統治制度の根本的な問題は、最高指導者と地方の間の意思疎通が迅速かつ正確に行われず、カリスマ化した最高指導者に対するチェック機能が働かないことだ。

広大な国土と世界最大級の人口を擁する中国では「鶴の一声」が往々にして極端な結果を招いた。

カリスマ化した前例である毛沢東統治下で起きた「大躍進」や「文化大革命」の悲劇はあまりに有名だ。1979年から実施された「1人っ子政策」でも極端な人口減少を生じさせる結果となった。

習近平のやり方は伝統的な統治制度を復活させた感が強いが、「ゼロコロナ政策の突然の解除によってもう一つの悲劇が生まれるのではないか」との不安が脳裏をよぎる。

習近平の歓心を得るため、これまでゼロコロナ政策を墨守してきた地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。

台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまったのが内情だろう。

国民は「政府発信」の情報が信じられない

中国政府は「新型コロナの感染は収束しつつある」と喧伝しているが、専門家の間では「中国の感染爆発は長期にわたって続く」との見方が有力だ。

農村部の高齢者の犠牲を防ぐことがゼロコロナ政策を正当化する根拠だったことから、中国では今後、農村部を中心に100万人以上の死者が出るかもしれない。

中国政府が「不都合な真実」を隠蔽する可能性が高いが、このような姿勢は「人民の安全を守る」という政府の最も重要な責任を放棄したとのそしりを免れないだろう。

ゼロコロナ政策の解除により、政府の存在感が急速に薄れているのが気になるところだ。

新型コロナの感染が急拡大する中、政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている(1月19日付ブルームバーグ)。

新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている(1月24日付ブルームバーグ)

ゼロコロナ下で非常に大きな存在感を示していた政府は「今は昔」だ。人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない。

富裕層が逃げだした

政府がゼロコロナ政策に伴う渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速している(1月26日付ブルームバーグ)。

共産党に楯を突かない限り、富を増やし続けられることができた富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としているからだ。

「政府による一党支配を受け入れる代わりに、国民の安全を維持し生活を向上させる」という、これまでの社会契約が無効になりつつある。

慣れ親しんできた統治制度を抜本的に見直すことは困難だ。

だが、そうしない限り、体制の危機が進んでしまうのではないだろうか。

 習近平政権の3期目が始まった途端、白紙デモが起き人口減少が始まりました。民衆が政権からの距離を置き始め、人口減少と経済政策の司令塔の経済音痴が重なれば、経済失速は早められ経済に支えられてきた共産党の基盤も揺らぎます。富裕層が逃げ出すのも頷けます。

 この周辺諸国には極めて迷惑なモンスターが弱体化すれば、それはそれで歓迎すべき事かも知れませんが、国内問題を外への覇権行動により覆い隠そうとする政策も十分考えられます。つまり国内が混乱する前に、台湾統一を画策しようとする動きが顕在化するかも知れません。日本はここ数年が対中問題に関して、正念場を迎えるでしょう。「お花畑は」一掃しなければなりません。

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2023年1月27日 (金)

中国「非公式警察署」東京・銀座と名古屋にも 米報告書が指摘、「れっきとした侵略」なのに政府の対応は?

Gettyimages120206324911200x800700x420  以前にも取り上げましたが、中国の「非公式警察」の存在。今回日本の政府の対応を揶揄するかのように、既に2019年にアメリカの保守系シンクタンクが報告書で指摘していたのです。

 その内容を産経新聞の論説副委員長の佐々木類氏がzakzakに寄稿していますので引用します。タイトルは『中国「非公式警察署」東京・銀座と名古屋にも 米報告書が指摘 伊警察との合同パトロール成功が設置のきっかけか…「れっきとした侵略」石平氏』(1/26公開)です。

通常国会が、23日召集された。中国が軍事的覇権拡大を進めるなか、防衛力強化に向けた国家安全保障戦略など「安保3文書」の審議が最大の焦点となる。同時に、中国が日本国内に拠点をつくり、政財官界に浸透するだけでなく、在日中国人を監視・追跡する「非公式警察署」を設置していることも看過できない。産経新聞論説副委員長、佐々木類氏は、米保守系シンクタンクの報告書から、新たに、東京・銀座と名古屋にも「非公式警察署」の存在をつかんだ。岸田文雄政権は「目に見えぬ侵略」をいつまで放置するのか。

***********

東京・銀座のど真ん中にある雑居ビル。秋葉原に続き、都内で判明した2カ所目の「非公式警察署」がそこにあった。名古屋市内では、繁華街・栄地区に位置する久屋大通り公園に面する雑居ビル内に存在した。

これは、米首都ワシントンにある保守系シンクタンク「ジェームズタウン財団」が、2019年1月5日付電子版で公表した報告書で指摘していた。

最初に判明した秋葉原の「非公式警察署」は、中国の人権問題を監視するスペインの人権NGO「セーフガード・ディフェンダーズ」が昨年9月の報告書で明らかにしたものだ。

Fmubqikauaijwj2 筆者は先週、夕刊フジ連載第3回で、22年5月15日付の中国共産党江蘇省委員会新聞(電子版)の公開情報をもとに、福岡県内にも「非公式警察署」が存在していることを報じた。

さて、「ジェームズタウン財団」の報告書によると、世界各国で主権侵害の疑いが指摘されている「非公式警察署」の前身は、18年10月に南アフリカに設立された「警察協力センター」だという。「純粋な警察組織ではないが、中国共産党政権と深い関係にあるという点で、警察組織のようなものだ」と指摘する。

報告書は、南アフリカの駐中国大使館と、警察協力センターの関係について、「両者とも、南アフリカにいる中国人の生命と財産を保護するための組織であると強調している」という。

両者に共通するのは、中国共産党の海外情報機関「党中央統一戦線工作部(統戦部)」が関与している事実には触れず、習近平国家主席の掲げるスローガンを繰り返し発信するなど、「政治目的を持っていることが明らかな点」だという。警察協力センターは現在、統戦部の下部組織になっているようだ。

そして、統戦部が、世界各国に「非公式警察署」を設置するきっかけになったのは、筆者の見立てでは、16年から始まったイタリア警察と中国警察による合同パトロールの成功体験にあるのではないかとみている。

イタリア北部にはブランド品製作のため、中国人労働者が多数移住したが、労働環境への不満などから一部が暴動を起こすなど、問題となっていた。このため、ローマやミラノ、トリノなどで、10日間~3週間、中国とイタリアの警官4人ずつが一組となってパトロールしたのだ。

発展途上国では、経済支援で駐在する中国人が、地元の暴漢に襲撃されて死傷するなどの被害が出たことを理由に、華僑支援組織の設立を相手国に認めさせ、事実上の警察活動を始めている。

しかし、日本国内に複数の「非公式警察署」が存在している事実は、中国の浸透工作の深刻さを示すものだ。

■石平氏「非公式警察署もれっきとした侵略」

中国事情に詳しい評論家の石平氏も「正直、驚いた。(中国共産党江蘇省委員会新聞などを見る限り)民主活動家や一般の中国人の監視や妨害活動など、やりたい放題だ。人民解放軍による日本上陸は歴然とした侵略だが、非公式警察署の存在もれっきとした侵略だ」と語る。

林芳正外相は昨年11月29日の記者会見で、中国に対して、「仮に、わが国の主権を侵害するような活動が行われているということであれば、断じて認められない旨の申し入れを行っている」と述べ、関係省庁とも連携して対応する考えを示した。

欧米各国が昨年中から、捜査や閉鎖要求に乗り出しているなか、岸田政権の動きは見えない。

石氏は「最低限、『非公式警察署』を閉鎖させられないと、自国に対する主権侵害を容認したことになる」と対応の甘さを批判した。

通常国会では、与野党が「非公式警察署」の問題を徹底的に議論して、岸田政権に「検討ではなく断固たる行動」を要求すべきである。

 この問題こそ国会論戦で野党の追及の対象とすべきでしょう。旧統一教会問題などとは次元の違う主権侵害問題です。だが今のところ議論が行われた情報はありません。

 数年前から欧米では取り上げられていたこの問題、日本のメディアに登場し始めたのは昨年くらいからではないでしょうか。その政府対応も佐々木氏の記事にあるように、「仮に、わが国の主権を侵害するような活動が行われているということであれば、断じて認められない旨の申し入れを行っている」と、いつも通りの答弁で、積極的に排除しようとする姿勢は殆ど見られません。本当に主権に関わる問題とみているのか疑わしい限りです。やはり中国への忖度が前面に出ているのでしょうか。

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2022年12月27日 (火)

内部レポート入手!公式発表とは正反対、中国のコロナ感染大爆発 一方当局は責任逃れのためか数字の公表中止

5_20221226161601  一つの政策転換で、これほど国内の状況が一変するのでしょうか。連日テレビの報道を賑わしている、中国のコロナ感染爆発。少し前まではゼロコロナ政策で完全に封じ込めていたはずのこの感染症が、規制を解いた途端に、信じられないほどのスピードで拡大しているようです。

 その要因は何でしょう、そしてその影響はどうなるのでしょうか。前回に続き今回は、約1週間後の中国のコロナの現状を取り上げます。ジャーナリストの近藤大介氏がJBpressに寄稿した記事から、その詳細を見てみましょう。タイトルは『内部レポート入手!公式発表とは正反対、中国のコロナ感染こんなにヤバかった 東アジア「深層取材ノート」』(12/25公開)で、以下に引用します。

 日本はクリスマスで浮かれているというのに、中国がこの世の地獄のような事態に陥っている。全土に凄まじい勢いでコロナウイルスが蔓延し、数億人の発熱者と、大量の死者を出しているもようだ。

 中国で日本の厚生労働省にあたる国家衛生健康委員会の12月24日の発表によれば、23日の中国全土の新規感染者数は4128人で、死亡者はゼロである。また前日の22日の新規感染者数は3761人で、死亡者数はゼロ。まったく問題のない状況だ。

 だがこれこそ、「大本営発表」というものだ。実は、国家衛生健康委員会は12月21日午後4時から、極秘の緊急テレビ電話会議を開いていた。この会議の正式名称は、「新型コロナウイルス患者の医療救急活動を強化することに関するテレビ電話会議」。主催したのは、同委員会の李斌副主任で、全国の衛生健康委員会や主要病院などと回線をつないで行った。

当局によってSNS上から削除された「極秘会議」の概要

 この極秘会議の概要を、おそらく参加者の一人が、あまりにいたたまれなくなって、SNS上にアップした。それはほどなく、当局によって削除されたが、その前にかなり拡散しており、私もその内容を入手した。

 私はその概要を読んで、2019年の大晦日に、湖北省の省都・武漢で、李文亮医師が世界に先駆けて、新型コロナウイルスの感染爆発を告発したことを思い出した。李医師は公安(警察)に出頭命令を受けて、「デマを流した」ことにされた。

 そしてそれから1カ月余り後に、新型コロナウイルスの治療に当たっていて自らも感染し、34歳の若さでこの世を去った。今回、内部告発した中国人も、おそらく李文亮医師と同じ気持ちから行ったのだろう。以下に、その内容を訳す。

12月20日の新規感染者数、3699万6400人!

<国家衛生健康委員会の馬暁偉主任は、次のような見解を示した。全国の防疫措置をさらに一歩、調整するにつれ、春節(2023年1月22日)の大移動と春節期間中、人々が大規模に流動するようになる。

 おそらくさらに多くの地域で、ウイルスの蔓延は増加していくだろう。都市部と農村部の感染率が、ともに伸びていくことが見込まれる。

 かつ農村部の医療体制は底が薄い。慢性病にかかった老人が多い。いったん感染が加速的に蔓延していけば、局面はさらに厳しいものとなるだろう。

 全国31の省級行政地域の中で、北京市と四川省の感染状況が最も深刻で、それぞれ1位と2位だ。どちらも累計の感染率は、すでに50%を超えている。続いて、感染率が20%から50%の間が、深刻な順に、天津市、湖北省、河南省、湖南省、安徽省、甘粛省、河北省となっている。

 12月20日の新規感染者数は、おそらく3699万6400人に上る。これは総人口の2.62%にあたる。18日よりも19日の方が、そして19日よりも20日の方が感染者数が増えている。

 省別に言えば、20日の感染率が高かったベスト5は、四川省、安徽省、湖北省、上海市、湖南省の順だ。都市別で言うなら、トップ4都市は、成都市、蘭州市、合肥市、上海市の順だ。

 累計の感染者数で言えば、2000万人を超えたのが、多い順に四川省、河南省、湖北省だ。1000万人から2000万人の間が、多い順に湖南省、河北省、広東省、北京市、安徽省、山東省だ。都市別に言えば、累計の感染者数が500万人を超えたのが、多い順に北京市、成都市、武漢市、天津市、鄭州市、重慶市だ。

一部の都市ではピークアウトの兆しも見られるものの…

 このように現在、各地域のウイルスの蔓延状況は、比較的大きな差異がある。そしてウイルスが多発している地域は、「密集空間」という特徴がある。

 中でも、北京市・天津市・河北省、四川省と重慶市、湖北省と湖南省、華中地域のウイルスの拡散が比較的早い。一方、長江三角州、珠江三角州、西北と東北地方のウイルスの流行は、相対的に緩慢だ。

 北京市・天津市・河北省地域のウイルス状況は現在、「高止まりの流行」の段階だ。ただ北京市はすでにピークを過ぎ、ここ数日は「緩やかに下降」の態勢だ。

 それでも日々、大量の新規感染者が出ている。加えて現在、重症者のピークを迎えている。そのため、医療救急治療サービスは大きなプレッシャーに直面している。

 天津市は、いままさに流行のピークを迎えている。おそらくあと2日か3日で、山を越えるだろう。河北省は全体的に「ウイルスの拡散スピードが速く、感染者が急増」している。おそらくあと3日から5日で、ウイルスのピークを迎えるだろう。

医療逼迫

 四川省と重慶市地域、湖北省と湖南省地域のウイルスの拡散は迅速だ。特に四川省全域でウイルスは急速に増えており、北京に次いで2番目に感染率が50%を超えた地域となった。成都市を含む多くの都市が同時に流行のピークを迎えており、全省の救急医療の圧力は大きい。

 重慶市に至っては、市内の主要地域から遠く郊外へと、急速に広がりつつある。おそらくこれから一週間前後でウイルスのピークを迎えるだろう。

 湖北省全省はまさに、ウイルス流行のピークを迎えている。直近の二日間は、感染の波が下向きの傾向を示した。

 12月1日以降、中国の19省で累計1100例の感染者のウイルスのゲノムから、12種類の配列のオミクロン変異株が発見されている。主要な流行株は「BA.5.2」「BF.7」「BM.7」だ。

 その中で、北京市、黒竜江省、貴州省、新疆ウイグル自治区では「BF.7」の比重が高い。その他の省ではすべて、「BA.5.2」の比重が高い。いまのところ拡散力、感染力、免疫逃避で具体的に明らかにこれまでとは異なる新たな変異株は発見されていない。

猛烈な感染拡大で新たな変異株発生のリスクも増大

 昨今、全国のウイルスは全体的に、加速的に広がっている段階にある。一日の新規感染者数も増え続けている。12月になってから、人々の累計の感染率は(全人口の)17%を超えた。おそらく12月下旬が、全国の多くの省で、引き続き感染のピークを迎えるだろう。

 加えて、現在ウイルスが広がっている省では、現在もしくはこれから「省の中心都市から中小の都市や農村地域への広がり」が進んでいく状況にある。そしてウイルス流行のピークの1週間前後に、重症及び非重症患者のピークを迎える。

 全国の各地域では確実に、流行のピークに対する応対準備の活動を強化し、ウイルスの流行の進み具合に応じて、全面的な医療救急治療など各種の準備活動を行っていかねばならない。

 馬暁偉主任はこう総括した。各地域の病院は、大量の病人の面倒を看るにあたって、「病人が病院の前にいまにもやって来るのに、(一部の病院は)まだ粗暴な対処しかできていなかったり、逃避しようとしている」。どの病院もそれぞれの地域に置かれた病院として、「あれこれ考えずに、これはやらねばならない任務なのだ」として、早めに準備し、チャレンジに立ち向かうのだ>

 以上である。「大本営発表」の感染者数とはゼロが4つも違う「阿鼻叫喚の世界」が広がっているのだ。大半の若者たちは、数日の高熱の後、回復に向かっているようだが、少なからぬ高齢者が犠牲になっているもようだ。ちなみに中国国家衛生健康委員会は、12月25日より、感染者数の「大本営発表」すらやめてしまった。

 それにしても、一日に約3700万人もが感染したと衛生健康委員会が推定した12月21日、習近平主席はロシアからドーミトリー・メドベージェフ前大統領(統一ロシア党党首)を北京に招いて、会見した。その時の「満面の笑顔」が、CCTV(中国中央広播電視総台)のトップニュースで流されたが、「恐るべき鈍感力」の持ち主だと畏れ入ってしまった。

 今後、何より恐ろしいのが、概要でも指摘されていた「新たな突然変異」である。これだけ同時期にウイルスが拡散すれば、当然ながら「新たな突然変異」が起こる確率も高まってくる。

 私たちはコロナウイルスを、「もはやカゼのようなもの」と認識し始めているが、とてつもなく深刻なウイルスに変異するかもしれないということだ。その意味で、いま中国で起きている惨事は、日本人にとっても他人事ではない。

 感染爆発については、ワクチン摂取率の低さ、そのワクチンの感染力低下性能の低さ、更にはゼロコロナ政策で感染履歴者数が少なく、抗体ができていない人が殆ど、などという要因が報じられています。実は上海在住の私の中国の知人も、ワクチンを接種していながら、最近感染したという報告がありました。

 記事にもあるように、当局は責任回避のためか、感染者数や重症者数の公表を取りやめています。死者数は殆ど基礎疾患の方の理由の死亡にしています。つまり実態は全く分からない、闇へ葬り去ったのです。そして感染者が増えることによる、集団免疫化を狙っているとの報道もあります。まさにこれが権威主義国家のやり方なのです。

 我々も他国のこととして無関心ではいられません。その一番のリスクは感染力の更に強い変異株の発生です。日本でも次々に生まれてくる変異株によって、第8波まで感染拡大が続いています。もうこれで終わりにしたいところに、新たな変異株を持ってこられたら、たまったものではありません。水際対策をしっかりして、なんとかそれだけはお断りしたいものです。

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