政治とテロ

2022年10月21日 (金)

ウクライナ侵略戦争:追い込まれたプーチン、今後どんな「大どんでん返し」が起きてもおかしくない

Images-14_20221020173301  ロシアはウクライナ侵略後、最近になって東部4州で国民投票を実施、併合を宣言しました。またクリミア大橋の爆破を受けてこの4州に戒厳令の導入も宣言しました。プーチンの振り上げた拳はより高くなり、落とし所を見いだせないまま、ますます深みにはまって行っているようです。

 今後の展開はどのメディアや各国政府も読みにくく、プーチンの頭の中にしかないと言われていますが、そのプーチン自身も分かっていないのではないでしょうか。いずれにしろここへ来ての矢継ぎ早の政策は、プーチン政権の焦りの象徴かも知れません。

 そのあたりの詳細を、元防衛関連雑誌編集長で現在フリーの、深川孝行氏がJBpressに寄稿したコラムに求めてみます。タイトルは『プーチン戦争の末路、「宮廷革命」「核」「朝鮮半島化」のシナリオを検証する 追い込まれたプーチン、今後どんな「大どんでん返し」が起きてもおかしくない』で、以下に引用します。

 2022年2月24日に勃発したロシアのウクライナ侵略戦争も間もなく9カ月目に突入。ロシア・プーチン大統領の劣勢が伝えられる中、メディアや専門家からいろいろな「終戦・停戦シナリオ」が飛び出している。そこで注目シナリオにスポットを当てて検証してみたい。

プーチンのイエスマン“KGB閥”が軍人たちを圧倒

 一説ではウクライナ侵略作戦のシナリオは、プーチンにとり“古巣”の巨大スパイ組織、旧KGB(国家保安委員会)で、「同じ釜の飯」を食べた間柄のメンバーが中心になり練られたと言われる。

 一方ロシア軍のツー・トップ、ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長との関係性が気になるところ。とりわけ叩き上げの軍人であるゲラシモフは作戦立案に当然参画しているが、徐々に戦況が悪化すると、プーチンを首領とした“KGB閥”が軍人たちを圧倒してますます無茶な作戦プランを立案して苦戦・・・という悪循環にはまっているとの分析もある。

 KGB閥、いわば「プーチン仲良しクラブ」の顔ぶれは次のとおりだ。

  • パトルシェフ連邦安全保障会議書記/KGBでプーチンと同期
  • ボルトニコフFSB(連邦保安庁=KGBの後身)長官/同じく同期
  • ナルイシキンSVR(対外情報庁=旧KGB対外情報部の後身)長官/同じく後輩
  • ゾロトフ国家親衛隊(旧国内軍で国内治安を担当、暴動・内乱鎮圧部隊)総司令官/同じく同期でプーチンの元ボディガード

 KGB閥の面々は職業軍人としての経験はなく、いわば軍事作戦立案の素人。むしろ十八番(おはこ)は旧KGB仕込みの謀略や欺瞞、権謀術数の類で、彼らの作戦は「机上の空論」との指摘も多い。

 一方ゲラシモフは筋金入りの軍人で、しかも誇り高き戦車部隊出身であり軍内での信望も厚い。ちなみにロシアでは戦車兵を大祖国戦争(第2次大戦時の独ソ戦)の時にナチスドイツ軍の侵略から母国を死守した英雄と見なす。

 またゲラシモフはハイブリッド戦(軍事と経済・文化など非軍事を織り交ぜて戦争を遂行)を謳った「ゲラシモフ・ドクトリン」を提唱し、2014年のクリミア半島の一方的併合の際にその威力を見せつけたとも言われている。

 プーチンの「イエスマン」に違いはないが、プライド高き軍人・ゲラシモフが稚拙な戦争プランで、半ば「子飼い」の戦車部隊や部下たちがウクライナ軍や西側製兵器により無駄死する光景を黙って見ているとは考えにくい。しかも侵略戦争に従軍した甥のゲラシモフ陸軍少将は戦死しており、加えてプーチンは戦況悪化の責任を彼に押しつけ、今や閑職に追いやっているとも聞く。

健康問題を理由にした「勇退」ならメンツも保てるか

 実際ロシア軍のダメージは想像以上だ。アメリカ国防総省(ペンタゴン)によれば、ロシア侵略軍約15万人の死傷者が7~8万人に達すると推計。投入兵力の実に半分に達する酷さで、部隊の戦闘継続もままならないだろう。さらにロシアの独立系メディアはFSB現役将校などの話として死傷者と行方不明者は「9万人以上」と報じる。このためプーチンは9月下旬、ついに“禁じ手”とも言うべき一般国民への部分動員に踏み切り、スキルの低い30万人を徴兵して頭数を揃えたい構えだ。

「ロシア軍は総兵力90万人以上を擁するのになぜ兵力不足なのか」と訝る向きもある。実は今回の侵略戦争は歩兵や戦車など地上軍が主軸で、ロシア正規軍90万人の中でも投入できるのは陸軍28万人のほか、海軍歩兵(海兵隊)3.5万人と空挺軍4.5万人の計36万人と意外にも少ない。これに別組織の大統領親衛隊約34万人が加わって計70万人といったところ。そこから交代要員や広大な国土の防備などを勘案すれば、戦争に動員できる兵力は3分の1で「20万人強が限界」という計算が成り立つ。

 話を戻すと、最前線で部下が犬死にしゲラシモフ自身も冷遇の状況で、最近では国民に人気で愛嬌ある国防相のショイグにも作戦失敗の汚名を着せ、詰め腹を切らせようと訴える国内保守派の勢いが増している。

 一方対照的にFSBや国家親衛隊、悪名高きチェチェンの民兵組織、民間軍事会社(PMC)という名の傭兵組織「ワグネル」など、正規軍から見れば筋の悪い面々を重用するプーチンを苦々しく思っているとしても不思議ではなかろう。

 しかもプーチンは前線部隊にまで細かく命令を発し、作戦失敗の際は責任を現地指揮官に被せて次々に首をすげ替え、しかもこれを加速させているようだ。「祖国を守った」という自負があるロシア軍への狼藉が続けば、ゲラシモフでなくとも血気盛んな青年将校らが「プーチン外し」に動くかもしれない。

 この場合、政治的中立を重んじる軍部がクーデターの主役になるとは考えにくい。むしろ最強の武力を背景に「そろそろ潮時」と感じ始めたシロヴィキ内の旧KGBメンバーを篭絡し、外堀を埋めた後にプーチンに引導を渡すというシナリオも考えられる。一種の「宮廷革命」で、プーチン政権の“サドンデス”(突然死)でもある。

 実際1962年にアメリカと核戦争のチキンレース、いわゆる「キューバ危機」を演じた旧ソ連のフルシチョフ第一書記は、この時の妥協や権力の過度な集中、短気な振る舞いなどが災いし、幹部の造反で数年後に失脚した。ただし「年金」「別荘」「お抱え運転手」の“三種の神器”は国家が終身保証した。体のいい軟禁状態だ。

 こうした先例もあるため、例えば同様の特典を保証する代わりに、健康が芳しくなく勇退という体裁ならメンツも保てる──というシナリオだ。余談だが病気を理由にしたトップの引退劇は日本の大企業でも時折見られる「裏ワザ」だ。

核兵器の使用は天にツバを吐くようなもの

 追い込まれたプーチンによる一打逆転の奇策として、大手メディアは「限定的核兵器の使用に踏み切るのでは?」という悪夢のシナリオを報じて警鐘を鳴らす。ただ「絶対にない」と断言はできないものの、可能性は極めて低いというのが筆者の結論だ。

「核」使用はアメリカの核報復を誘い、全面核戦争へとエスカレートして人類滅亡──という軌跡を辿るだけだからだ。70歳の誕生日を迎えたプーチンはロシア男性の平均寿命約68歳を考えればすでに「長寿」の域だが、2人の娘や孫を考えた場合、「メンツ」だけで核のボタンを押すほど非情だとは思えない。

 KGB出身のスパイだけに逆に計算高く論理的で、一連の核使用の「ほのめかし」も、お得意の「プロパガンダ」「はったり」と見続けたほうが無難だろう。

「黒海のスネーク(ズミイヌイ)島に小型戦術核ミサイル1発を撃ち込むのでは?」と指摘する向きもある。同島はウクライナ領だが、開戦早々ロシア軍が占拠したものの同年6月に奪還された。

 スネーク島はウクライナにとっては抵抗のシンボルで、黒海に浮かび小規模のウクライナ軍守備隊しかいない同島に戦術核を1発(威力は広島型原爆の5~10倍と推定)お見舞いすれば被害は最小限で済み、確かにウクライナと西側の戦意をくじくには好都合だろう。

 だが、島はNATO加盟国のルーマニアまで40km弱の近さ。NATOは加盟国への核兵器による放射能被害も「攻撃」とみなし集団的自衛権を発動する構えで、ロシアはNATOとの全面対決を覚悟しなければならない。これでは自縄自縛だ。

 また「ウクライナ国境近くで核実験を行って恫喝するかもしれない」との指摘もあるが、国境地帯はチェルノーゼム(肥沃な黒土)が広がる世界屈指の穀倉地で、核実験に適した砂漠や荒れ地はない。仮に核実験を強行すれば大掛かりな住民避難が必須で、「何かあるな」と世界中がすぐさま察知する。

 加えて、放射性物質の拡散を避けて地下核実験に徹するとの見方もあるが、「キノコ雲」が生じる大気圏内核実験でないとビジュアル的なインパクトに欠け、単なる「核実験」意外のなにものでもない。それ以前に前述のように穀倉地帯が広範囲に放射能汚染され、ロシア自身が深刻な食糧不足に陥る可能性も高い。

 これは1986年に発生したチェルノブイリ原発事故の惨状を見れば明らかで、「季節を計算し欧州方面の西側に風が吹く時に行えばいい」と安直に思うかもしれないが、ウクライナ周辺上空には常に偏西風が吹くため確実に放射性物質を帯びた塵(ちり)がロシアの広大な小麦地帯を襲うことになる。

原子力核魚雷「ポセイドン」炸裂の現実味

 さらに「原子力推進核魚雷『ポセイドン』がニューヨーク沖で炸裂すれば、高さ500mの津波に襲われる」とおどろおどろしく伝える国内メディアもあるが、そもそも「ニューヨーク沖」に全く根拠はなく、ある程度「眉唾」だと思ったほうがいいかもしれない。

 ポセイドンは直径2m、長さ20mでちょっとした小型潜水艦の大きさ。原子炉を積み射程距離は1万km、時速100km超を発揮すると言われ、実はまだ完成半ばだ。単純計算で「広島型」の6700倍に相当する100メガトンの水爆を搭載し、水深1000mまで潜れ現行潜水艦(最大水深400~500mが限度)での迎撃は不可能だ。

 また海中で爆発すると高さ500mの津波が発生するとの“触れ込み”だが、「500mの津波が発生」は、そもそもロシア軍/国防省が1度も発表したことはなく、2022年の5月にロシア国営テレビが「核融合(=水爆)魚雷を英本土近くで爆発させればグレートブリテン島全部を津波で飲み込むことができる」とのロシア国内向けの“国威発揚”シミュレーションの放送がどうやら独り歩きしたようだ。

 ちなみに恐竜が絶滅し、地球上の生物の75%が死滅した6600万年前の小惑星の落下(チクシュループ衝撃体)は、中米ユカタン半島に落下した時300~1600mの津波が発生したと言われ、そのエネルギーは「広島型」の10億倍と見られる。「6700対10億」では桁が違い過ぎて話にならない、と指摘する軍事専門家も少なくない。

 百歩譲り本当に500mの津波を発生するポセイドンをニューヨーク沖で使ったとしたら、大西洋一帯を大津波が襲うことは確実だ。この時ロシアが敵視するNATO諸国が壊滅的被害を受けるのはもちろんだが、ロシアに友好的なキューバやベネズエラ、ニカラグア、さらにはBRICSの一翼を担いプーチンに理解を示すブラジルや南アフリカも数十mの津波で大惨事となるはず。

 さらにこれだけでは済まず、津波は北極海にも及び、ロシアの超重要な原子力潜水艦基地があるコラ半島のムルマンスクも確実に津波に襲われる。しかもこの地はリアス海岸と地形が酷似するフィヨルドで津波のエネルギーが集中しやすい。

 つまり自らも大損害を被るような最終兵器を苦戦の挽回のためにわざわざ使うはずがないという理屈である。それ以前にこれだけの破壊力のある兵器をニューヨークに使用すれば、確実にアメリカの核報復にあい、核戦争にエスカレートし人類滅亡という軌跡をたどることは必至だろう。

 このようにロシアが限定的とは言え核兵器を使いウクライナやNATOを恫喝し有利な条件で停戦に持ち込めるのではと考えても、結局はNATOとの全面核戦争、人類滅亡へとエスカレートするリスクが極めて高い。それ以前に自国の物理的被害も多大で現実的ではない。

落としどころは「第2の朝鮮半島」か?

 こうした中、専門家の一部は「第2の朝鮮半島」という“落としどころ”を指摘する。

 ただしこの場合ウクライナ、ロシア双方が戦争長期化で疲弊し、厭戦ムードも広がり、これ以上戦闘継続は難しいと両首脳が実感した時か、または前述のようにプーチン政権が突然倒され、後任の権力者あるいは集団指導体制がこれ以上の戦争を望まず、とにかく講和に持ち込んで西側との関係を修復し国内経済を立て直したいという願望が強い時だけだろう。現在のように侵略を受けたウクライナの側が優勢で反攻に転じて領土を奪還している最中では、停戦に応じるはずがないからだ。

 仮に両者の間で停戦が成立したら、いの一番に行われるのが軍事境界線の設定だろう。

 朝鮮半島ではDMZ(非武装地帯)と呼ばれ、両軍が直接対峙して軍事衝突しないように設けた中立地帯のゾーンが北緯38度線に設けられている。同様の境界線を構築し、さらにここを警備するために例えばインドやナイジェリア、インドネシアといった中立的な国の軍隊による国連PKO部隊が駐留し、軍事境界線を警備する。万が一どちらかが戦闘行為に出て国連PKO部隊に被害が出れば、国際法の重大違反で世界中からの指弾は免れない。

 肝心の「軍事境界線はどこに引くのか」についてだが、これは今後の戦況しだいというほかない。筆者の独断に過ぎないが、やはり現実的なのはウクライナ侵略戦争以前の2022年2月24日のラインとなる可能性が高いのではなかろうか。

 ウクライナ東部の旧ドンバス・ルガンスク両人民共和国の軍事ラインが基本で、さらにクリミア半島の半分か、できれば全部をウクライナが奪還、という辺りなら、不満はあるもののゼレンスキー政権が首を縦に振る可能性はあるかもしれない。しかもその場合は、停戦が発効した瞬間に「ウクライナのNATO加盟またはアメリカとの軍事同盟締結」を実現させるのが最低条件だ。

 朝鮮半島の現状を見ると、DMZで南北朝鮮は分断され、いまだに両国間の戦争は「休戦」状態にあり「終戦」ではない。だが後にアメリカは韓国と相互防衛条約を締結し集団的自衛権を掲げる。ウクライナも同様にNATOに即日加盟か、アメリカとの相互防衛条約を結び集団的自衛権で自国の安全保障を確固たるものにする発想である。

 このように可能性についていろいろ検証したが、2022年2月上旬の段階でロシアがウクライナに大軍で攻め込むなど、軍事専門家の大半が夢にも思わなかった事実を考えれば、今後どんな「大どんでん返し」が起きても不思議ではないだろう。

 ウクライナのNATO加盟は休戦と行ってもにらみ合いが続く中で、加盟国全部が承認とはならないでしょう。そもそもプーチンが侵略を決意したその理由の一部が、ウクライナのNATO加盟の動きを牽制したからでもあります。

 とは言え極めて難しい停戦合意の動きの中で、深川市の言う「プーチン健康不安での勇退」はあり得るのかも知れません。しかしそれも取り巻きがプーチンでは駄目だと思うか、国民がプーチン政権を見限るかでしょうが、いずれにしろすぐには実現はしないでしょう。

 ただ世の中何が起こるか分かりません。ロシアのウクライナ侵略も「まさか」でしたし、ウクライナの想像以上の反撃も「まさか」でした。ここは一つ期待は薄いでしょうがまさかの「大どんでん返し」が起こるのを祈るしかないようです。

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2022年9月27日 (火)

安部元総理の国葬粛々と、安らかな旅立ちを

5_20220927095701  本日は安倍元総理の国葬の日です。戦後日本の自虐史観に真っ向から立ち向かい、強く美しい日本を取り戻すと日夜奮闘された安倍氏を、粛々とお送りしましょう。産経新聞に投稿された、元東京地検特捜部検事で弁護士の、高井康行氏の記事を引用して、安倍氏の国葬に添えます。タイトルは『安倍氏には国葬こそがふさわしい』です。

令和4年7月8日午前11時30分ころ、安倍晋三元首相は奈良市西大寺東町の近鉄大和西大寺駅北口付近の路上において、参議院選挙の応援演説中、背後から銃撃を受け非業に斃れた。安倍元首相は、憲政史上、最長の通算8年8カ月の長きにわたって、国民多数の支持を集めて政権を担った。首相退陣後も、将来、仮に日本が有事に見舞われるようなことがあれば、その指導力は欠くことができないとする声もあった。また、安倍元首相が主唱した「自由で開かれたインド太平洋」という概念は、今や欧米も採用する戦略的概念として定着しようとしている。このようなことはかつて無かった。

その非業の死は、今後の日本の政治に長く影を落とすことになるだろう。安倍元首相暗殺の第1報は国内はもちろん世界にも大きな衝撃を与え、世界各国の首脳からその死を悼む痛切な声が寄せられた。欧米首脳の素早い弔意の表明の背景には、安倍元首相亡き後の日本の行方に対する深い憂慮があるようにも思う。

国葬反対論に説得力はない

その安倍元首相の葬送の形はどうあるべきか。私は安倍元首相を弔うには国葬をもってする以外にないと思う。もし、安倍元首相が病などによって亡くなったのであれば、国葬でなくともよい。しかし、安倍元首相は、民主主義の根幹である国政選挙に際し街頭で有権者に己の信じるところを訴えている最中、テロリストの銃撃に斃れた。

民主主義社会の選挙においては、演説をする者は誰であっても、どんな政策であっても、身の危険を感じることなく自由に有権者に訴えかけることができなければならない。政治的理由であろうと非政治的理由であろうと、選挙の遊説中に候補者や政治家が命を狙われるようなことが起きれば、民主主義社会の基盤は揺るがざるを得ない。

その意味で、たとえ、その動機が非政治的なものであったとしても、選挙を奇貨として、遊説中の政治家の命を狙う者は民主主義の敵と言うほかない。そのような者から、政治家の命を守るのは国の義務とも言える。にもかかわらず、当日の警備は、すでに警察当局も認めているように極めて杜撰(ずさん)なもので、本来であれば極めて容易に防ぐことのできたはずの銃撃を防ぐことができなかった。まことに、痛恨の極みである。その意味で、安倍元首相の非業の死は、国に大きな責任がある。安倍元首相を国葬をもって弔うことは、二度とこのようなテロを許すことなく、民主主義社会の基盤が揺るぐような事態を発生させないという国の固い決意を内外に宣明する意義を持つ。

また、古来、葬送の儀式は死者の魂を鎮めるという側面を持つ。そのため、どのような葬送儀式を良しとするかについては、それぞれの死生観が反映されることになるが、私は、日本の独立と平和、国民の安全を盤石なものにしようと尽力しながら、志半ばで国の不手際により非業に斃れた安倍元首相の無念を思うと、その荒ぶる魂を鎮めるためには国が国葬をもって弔う以外にないと考える。また、各国の首脳あるいはそれに近い級の要人から弔問を受ける場としても国葬が相応しい。一部には、今回の国葬はその内実においては内閣葬に過ぎないと指摘する意見があるが、格式において国葬であることに意味があると考える。

これに対し、国葬を定めた法令がない、あるいは、弔意の強制に当たるなどとして、国葬に反対する声がある。しかし、国葬とするかどうかの判断は、基本的に行政権に属するものであるところ、行政権には幅広い裁量が認められており、すべての具体的な行政行為に具体的根拠法令があるわけではない。もちろん、国民の権利を制限したり、新たに義務を課したりする場合には法律の根拠が必要だが、国葬は権利を制限したり新たな義務を課したりするものではない。そうである以上、行政を担う内閣の権能に基づき、閣議決定によって国葬を執り行うとすることは、何ら、憲法その他の法令に反するものではない。

また、今回の国葬にあたり、政府から招待を受けた著名人が、その招待状をネットに載せ、欠席を公言していることの一事を見ても、弔意が強制されていないことは明らかだろう。仮に、国民に対し、当日、一定の時刻に、一定の時間一斉に黙禱をすることを要請したとしても、それが任意を前提にする限り、弔意を強制することにはならないが、今のところ、そのような要請も無い。いずれの理由も、説得力に欠ける。

にもかかわらず、最近の世論調査においては国葬に対する反対意見が多い。もともと、世論調査の回答は質問の作り方によって左右される側面があるから、どこまで正確に国民の考えを反映しているかについては慎重に判断しなければならないが、いずれにしても、一部マスコミ等による旧統一教会(現「世界平和統一家庭連合」)に対する強い非難活動が世論調査の結果に影響を与えていることは間違いない。

テロリストに報酬を与えたマスコミ

安倍元首相の銃撃事件をめぐり奈良県警は、山上徹也容疑者の逮捕後、早い段階で、同容疑者が動機は、ある宗教団体に対する恨みであると供述している旨発表した。その後、警察の発表等により、同容疑者は旧統一教会の熱心な信徒である母親の多額な献金により家庭が困窮したため、旧統一教会に恨みを持っていたところ、安倍元首相が旧統一教会の関連組織の大会にビデオメッセージを送ったことを知って銃撃したと供述していることが明らかになった。これを機に一部マスコミや論者は非難の矛先を一斉に旧統一教会、旧統一教会及びその関連団体と僅かでも接点を持っていた政治家に向けるようになった。同容疑者の目的は十分に達成されたことになる。

もちろん、旧統一教会の霊感商法は批判されて当然であり、多額な献金も、それが心理的に追い込まれた結果としてなされているのであれば社会的に許容されるべきものではない。それによって困窮した家族に救いの手を差し伸べることも必要であろう。しかし、旧統一教会は宗教法人法で認められた合法的な宗教団体である。それにもかかわらず、その宗教団体をあたかも反社会的組織であるかのように扱い、これを排除しようとすることは、裁判を経ないで人を処罰しようとするに等しい。このような一部マスコミ等の論調は、適正手続きを重視すべき民主主義社会のありように反するだけではなく、旧統一教会の信徒に対する差別を生むことにもなる。その上、この一部マスコミ等の論調は、安倍元首相を銃撃したテロリストに報酬を与えているも同然であり、このようなことが続けば、第2、第3の同種テロが起きてもおかしくない。

今は、冷静になるときだ。

政治家の評価は歴史が決める

日本では、古来、敵であっても死者となった時には、その魂を崇めその安らかならんことを祈るのが風習あるいは礼儀である。国葬を欠席する方針の立憲民主党の中にあって、出席を明言されている野田佳彦元首相に深く敬意を表したい。

政治家に毀誉褒貶(きよほうへん)はつきものであり、それが有力政治家となれば尚更である。安倍元首相に対しても、その国葬に対しても、一部から強く反対する意見がある。しかし、政治家の評価は最終的には歴史が決めることであり、同時代人である我々の評価で定まるものではない。私は、岸信介元首相が政治生命をかけて成し遂げた日米安保条約の改定が、時を経て、日本の安全保障を支える基盤となっているように、安倍元首相の残した政治的遺産が日本を支えることになるであろうことを確信している。安倍元首相の魂よ、安かれ。

 安倍元総理、安らかに・・・

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2022年8月 9日 (火)

韓国「ニホンノセイダーズ」と日本「アベノセイダーズ」との共通項

Oip  安部元首相の襲撃事件から1か月を過ぎましたが、多くのメディアは相変わらず「国葬」の是非や「旧統一教会」と政治のかかわりを中心に報道し、この事件を起こしたテロリストともいうべき、山上容疑者のことは二の次になっているようにも思えます。

 いずれにしろ多くのメディア、特に反日メディアは反権力志向が強く、特に長期政権を築いた安部元首相に対しては「アベガー」と何でも批判の矛先を向けていました。一方隣国韓国は、ご承知の通り日本に対して何でも批判・非難の対象としており、この両者は何故か共通したものがあるようです。

 国際投資アナリストの大原浩氏が、そのあたりの事情を詳述していますので、以下に引用して紹介します。タイトルは『韓国「ニホンノセイダーズ」と日本「アベノセイダーズ」との共通項 テロリズムを許容するその心根』(現代ビジネス)です。

宗教問題ではない、民主主義に対するテロ

まず、安倍元首相暗殺事件は「『民主主義』に対する『暴力テロ』」である。決して、「宗教がどうのこうの」というたぐいの話ではない。

もちろん、現在色々と報道されている旧統一教会の過去行った行為を擁護するつもりはない。「霊感商法」などは社会悪と言っても良いと思う。だが、今回の「民主主義の言論の実践の場である選挙応援演説中」に卑劣な暗殺犯が「暴力(銃弾)によって国民に民主的選挙で選ばれた『国民の代表』を暗殺し、口を封じた」ということが、今回の暗殺事件の本質だということを忘れてはいけない。

1932年の5.15事件で「話せばわかる」と諭した犬養首相を「問答無用」と言い放って青年将校たちが撃ち殺した事件は、7月15日公開「『アベノセイダーズ』の罪と罰――安倍元首相暗殺が暗示する戦前昭和」で述べた。

この時が日本の民主主義の大きな岐路であったように思える。今回の安倍元首相暗殺事件がこの犬養首相暗殺事件に重なって見える。

ほとんどのメディアが、安倍元首相暗殺事件を旧統一教会(宗教)の問題に矮小化しようとしているが、「宗教と政治」をもし論じるのであれば、宗教との関係が公然の事実ともいえる「公明党」に関して、メディアがほとんど語らないのはなぜなのか?

あるいは、ウィキペディアの「Category:キリスト教系政党」には、過去のものも含めて世界の17政党が列記されている。

さらに、現在の米国大統領であるジョー・バイデン氏はジョン・F・ケネディに続く2人目のカトリック系の大統領である。

バイデン氏の教会通いの頻度がどの程度かわからないが、キューバ危機の緊張が最大に高まったころ、KGBを通じて「ケネディ大統領が教会で祈りをささげた」という報告を聞いたソ連の高官が、「核ミサイル攻撃を決断したのか!?」とパニックになったという逸話がある。

もちろん、ケネディ大統領は敬虔なカトリックであったので、「毎週」教会に通っていただけなのだが、共産主義に基づき宗教を禁止していたソ連の高官はそれがわからなかったのかもしれない。

また、バイデン氏はカトリックだが、米国を分断する「中絶問題」では、(カトリック教会の教えとは基本的に反対の)「容認派」である。

さらに、2020年6月28日公開「カトリック教会で『子供の性的虐待3000人以上』…狂信と信念の境目」や、2019年12月13日公開「ローマ教皇に言いたい、バチカンこそが難民を受けいれるべきです!」 4ページ目「ナチスの教皇から共産主義の教皇へ」などのカトリック教会が引き起こした問題の責任をバイデン大統領がとるべきなのだろうか?

ちなみに、CNN 7月26日の記事「ローマ教皇、カナダ先住民に謝罪 寄宿学校の虐待めぐり」によれば、カナダの寄宿学校では先住民の子ども4000人以上がネグレクト(育児放棄)や虐待のために死亡した。

結局、「宗教と政治」はもちろん重要な問題であり議論を尽くすべきだが、安倍元首相暗殺事件の本質ではないということだ。

テロリストの記念碑は許されるのか?

それよりも、私が危惧しているのは、「民主主義の最大の敵」であるテロやテロリストに甘い日本の大手メディアを中心とした風潮である。

例えば、明治政府を牽引し現在の日本の繁栄の礎を築いた伊藤博文を、卑劣にも1909年にハルピン駅で暗殺したのが安重根というテロリストである。

ところが、この安重根の記念碑が宮城県に存在(みちのく悠々漂雲の記/宮城県)し、県によって案内看板が設置されている。

詳しくは、和田政宗議員の「安重根をたたえる記念館等に関する質問主意書(参議院、質問第一六三号:)を参照いただきたいが、この話を聞いた時に耳を疑った。(なお、答弁書は「答弁書第一六三号」を参照)。

8月2日のBBCニューズで「アメリカ、アルカイダ指導者アルザワヒリ容疑者を殺害 アフガニスタンでドローン攻撃」と報道されているとおり、9.11テロを主導したアルカイダに対する米国の態度は大変厳しい。2011年には、オバマ政権によってビン・ラディンも殺害されている。

例えば、その米国で「ビン・ラディンの記念碑」を建設しようとしたらどのような反応になるか簡単に想像出来るであろう。ところが、日本で実際に同じようなことが行われているのである。

これでは「日本はテロ容認国家」であると海外から白い目で見られても致し方ない。

メディアの「言葉の暴力」を許してはならない

SAKISIRU2022年7月17日の「朝日川柳、安倍元首相の国葬“ネタ”にして大炎上」の副題は「『さすがにこれはひどい』元朝日記者の選者に非難殺到」だが、まったくその通りである。

「言論の自由」は広く認められるべきものだが、何事にも限度がある。また、「報道の自由」と言う言葉がよく使われるが、メディアが自由に報道する権利というのはあくまで、国民に与えられた「言論の(国民の知る)自由」の一部にしか過ぎない。

国民は「知る権利」を持っているから、その範囲内で自由な報道も認められるべきなのである。日本国民が民主的手続きで選んだ首相経験者を、「卑劣な暴力で口を封じられた」後に鞭打つことが「国民の知る権利」と関係があるわけがないから、朝日新聞の前記行為は「報道の自由」を逸脱した行為だ。

言ってみれば、色々なサイトで汚い言葉を投げつけ、場合によってはNHK2020年6月4日記事「木村花さんの死が問いかけるもの」を引き起こす人々と朝日新聞は変わらないといえる。

実際、前述1932年の5.15事件以降、日本の軍国主義を煽ったのは、朝日新聞を始めとする大手新聞(1940年以降は大政翼賛会が結成される)社であり、「アベノセイダーズ」ならぬ「キチクベイエイ(鬼畜米英)ノセイダーズ」を組織していたのだ。現在の地上波テレビ局のほとんども、これらの新聞社に起源を持っている。

考えてみれば、彼らの手法は戦前と変わらない。「キチクベイエイ(鬼畜米英)ノセイダーズ」が、「鬼畜米英には何をしてもいいんだ」というヒステリックな国民感情を煽ったのと同じように、「アベノセイダーズ」が「安倍首相には何をしてもいいんだ」というヒステリックな感情を煽ったのだ。

過去の「キチクベイエイノセイダーズ」は、適性国家の言葉である英語を敵視し、野球のストライクを「良し」とするような馬鹿げた言い換えを行っていた。

そして、世界中の国々から数えきれないほどの弔意が示され、同じく凶弾に倒れたマハトマ・ガンジーのように世界の歴史に残るであろう人の国葬を「『アベノセイダーズの敵』だから認めない」というのも同じように愚かな行為だ。

戦前我々が行うべきであったのは、ただ「鬼畜米英」と叫ぶだけではなく、「相手を理解するよう努力し、忍耐強く話し合いを続ける」ことだ。ところが、「アベノセイダーズ」は、「相手を理解することも、民主主義的話し合いもせず」ただ、「お前をたたき切ってやる」とか「アベ死ね」というような汚い言葉をヒステリックにわめくだけだ。

メディアを中心としたこのような状況はまさに戦前のデジャヴであり、大変危険なことだ。

「他人を尊重しない」ことが共通項

結局、「キチクベイエイノセイダーズ」や「アベノセイダーズ」は、自分と対等の人間として相手と向き合うことができず、自分の身勝手な意見をぶつけるサンドバックとしてしか相手を見ることができない。相手の心の痛みがわからないのだ。もちろん「思いやり」のかけらもない。

また、彼らは自己反省ゼロで、ひたすら相手の非を探し出して(捏造して)喚き散らすから、心が歪んでいく。これこそが「相手を尊重して話し合う」民主主義の危機だ。こんなことがまかり通れば「問答無用」で殺しあう時代が確実にやってくる。

例えば、8月1日の「外国人住民投票権のツイートをした金井米穀店が活動家から迷惑デモ行為を受ける」というアゴラの記事がある。要するに、金井米穀店がツイートした内容に対して、抗議者が店舗前やその周辺に集まってきて、営業ができないように圧力をかけた事件である。

前述、和田政宗参議院議員のフェイスブックのコメントでは「店舗前での執拗な抗議活動は、威力業務妨害との指摘があり、入店時に写真を撮られ怖かったとの証言もあります」とのことだから、「言論の自由」「表現の自由」をまったく逸脱した「常軌を逸した行為」と言わざるを得ない。

このような問題は、安重根以来の「ニホンノセイダーズ」においても同様だ。

日本(人)は寛容だから、「あなたが悪い」と言われると「ニホンノセイダーズ」達とは違って、「もしかしたら私に非があるかも……」と考えがちだ。これは素晴らしいことだが、「ニホンノセイダーズ」はそこに付け入るのだ。

7月10日公開「日韓関係改善ムードだそうだが、まず韓国の謝罪と償いがスタート地点」という状況にも関わらず、いまだに韓国が日本に謝罪を求めるという見当違いをしているのも、これまで「ニホンノセイダーズ」が韓国で増殖するのを放置してきた日本政府にも責任がある。

会津藩の「什の掟」の「ならぬことはならぬものです」という言葉は有名だが、我々は今こそこの言葉によって「ニホンノセイダーズ」を始めとする「ナントカノセイダーズ」に対して毅然とした態度で接するべきではないだろうか。

 大原氏がここで取り上げている、他者に不寛容で自己中心の考えを押しつける、「ナントカセイダーズ」は、日本の左翼メディア、左翼政党、左翼言論人、人権派弁護士や、各種市民活動団体に共通な特質でしょう。

 そして国レベルでそうした傾向を持つのが、所謂権威主義国家(独裁国家)で、それ以外にも大原氏が取り上げている韓国がその仲間と言えるでしょう。そうした国に対し、何故か日本の「ナントカセイダーズ」群はもの申せず、と言った態度ですが、それもあるいは「同類意識」を感じているからでしょうか。

 いずれにしろ安部元首相の襲撃の容疑者は、所謂テロリストと呼ぶべき殺人犯ですが、昨今のメディアの旧統一会叩きを見ていると、彼の敵と見なしていた旧統一教会への復讐が、皮肉にも現実に実りつつあるのでは、と言えるような気もしますが。

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